インドが世界の水銀の捨て場に

農業情報研究所(WAPIC)

03.11.17

 インター・プレスの報道(*)によると、インドが有毒水銀の輸入を続け、米国に代わって液状水銀とその混合物の最大消費国となっている。規制が緩いために、世界の有毒水銀の捨て場になっているためだ。

 金属水銀の輸入は1996年から2002年の間に254トンから531トンへと倍以上に増えた。農薬や殺生物剤を含む有機水銀の輸入は、同じ期間に0.7トンから1,812トンに増えた。いまや、世界の水銀混合物の半分を消費、その69%を加工している。

 対照的に、最近まで最大の水銀消費国であった米国は、その年間消費量を372トンにまで減らし、連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法、連邦食品・化粧品法などの厳格な適用を通して環境汚染を防いでいる。温度計、玩具、靴、自動車スウィッチ、サーモスタットなどの水銀使用製品は禁止される一方、温度計や歯科材料の州収集計画が設けられている。EUはすべての水銀工場の段階的廃止を決めており、およそ15,000トンをインドのような規制の緩い国に売る必要があるという。米国やスペイン・英国・ロシア・イタリアなどの輸出国は、過去7年間に、インドに3,000トンを輸出した。2001年、環境団体とドック労働者が大量の水銀を運んだ米国船からの陸揚げを阻止したが、以来、一切の監視が緩められている。

 インド半島の長い海岸沿いが「水銀のホットスポット」になっている。これら地域の魚はひどく汚染されており、大部分の場合の魚の汚染レベルは全水銀で0.5ppm、最も汚染レベルが高い西海岸では許容レベルの1.6倍になっているという。だが、体温計や医療器具、バッテリーなどを生産する工場から水系に放出される分は2%にすぎない。法の厳正な執行を欠くために、インドは世界の廃棄物の中心的受け入れ国となってしまった。これには高度な汚染につながる船舶解体の引き受けが含まれる。これが西海岸での重大な汚染を引き起こしているという指摘がある。

 BBC News(**)によると、先進国は環境汚染を減らす高コスト船舶解体を回避、環境や労働者の安全など気にもかけずに低賃金労働者を利用して解体するインド等アジアの沿岸に廃船を送り出している。主要な解体国であった中国も環境・労働規制を導入したために、ますますインドに集中するようになったという。先進国は、自国の汚染を途上国に撒き散らしているだけだ。先進国の規制は、地球規模では何の役にも立っていない。バイテク企業が安全規制の厳しい国から規制のない国に実験サイトを移すのと同様の構図だ。一国レベルでの規制がいかに強化されても、国際的調和を欠けば問題の根本的解決にはならない。そのことを示す好例だ。

 *  India is Dumping Ground for Toxic Mercury-Activists,Inter Press,11.5
 ** Asian draw for ship-beaking,BBC News,11.14

農業情報研究所(WAPIC)

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