全米科学アカデミー委員会、農薬人体実験を容認

農業情報研究所(WAPIC)

04.2.21

 全米科学アカデミーのナショナル・リサーチ・カウンシルは19日、農薬毒性の人体実験を認めるという驚くべき報告書を出した(Intentional Human Dosing Studies for EPA Regulatory Purposes: Scientific and Ethical Issues)。01年のブッシュ政府の要請に応えたものである。

 報告は、厳格な科学的・倫理的基準を満たすかぎりで、人間を故意に農薬その他の有毒物質に曝した研究から得られるデータの利用を環境保護庁(EPA)が許されるべきだと結論する。EPAは、安全性を評価する動物実験に根拠を置く研究だけを受け入れべきで、実験台となるボランティアに対する報酬は高すぎても、低すぎてもいけないという。

 これは、環境毒物に関する現在の規制は厳しすぎる、人体実験をすればより高い大気・水質汚染レベルでも無害なこと証明できると主張してきた製造業界の要望に答えるものだ。クリンントン時代のEPAは人体実験に基づくデータは受け入れなかったが、ブッシュ政権になってから受け入れの姿勢を示してきた。

 現在は、人間の安全許容量は、動物にとって有害な量の10分の1、一定の人々にはその10分の1(つまり動物の100分の1)、さらに子供や退治にはその10分の1(1000分の1)と定められている。毒物に対する感受性の違いを考慮したものだが、これが正確かどうかは、人体実験しなければ分からない。だが、人体実験までしてこれを確かめようというのは、どんな条件を付けようと「科学」の倫理の限界を超えている。アメリカでしか出ようがない発想だ。こんな「科学」がもたらすデータが世界基準を作るようになることになるのは絶対に許せない。温暖化、遺伝子組み換え、BSE、みんなそうだが、米国の「科学的精神」は、世界の人々の健康と命、環境をますます脅かすものとなってきた。

農業情報研究所(WAPIC)

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