欧州議会 厳しいPFOS販売・使用規制案を採択

農業情報研究所(WAPIC)

06.10.26

   EUの政策決定の一翼を担う欧州議会が25日、環境や生体に長期にわたって残留、人の健康や環境に重大な損害を与えると指摘されながら、なお繊維製品などの日常生活用品や一部工業製品に使われいるフッ素化合物・パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の販売と使用の厳しい制限を求める報告を採択した。

 European Parliament Press release:Parliament backs substitution principle for perfluorooctane sulfonates,06.10.25

 これは、PFOSの販売と使用を規制する昨年12月5日の欧州委員会の指令案の提案を受けたものだ。欧州委員会は、同日、「欧州議会のこの決定は、閣僚理事会(EUの決定機関)による提案の早期採択に道を開く。この提案は、現行法の下での危険物質の最後の制限の一つをなすもので、発効すれば提案されている化学物質立法(REACH、参照:欧州議会委員会 強力な化学物質規制(REACH)法案最終版を採択,06.10.11)に組み込まれるだろう」と、この決定を歓迎する声明を出した。

 European Commission:Commission welcomes European Parliament's agreement for strict rules on the use of perfluorooctane sulfonates (PFOS),06.10.25 

 欧州委員会によれば、PFOSは塩またはポリマーを含む他の派生品の形で商業的に利用が可能な状態にある。過去においては、グリース、オイル、繊維・絨毯・皮革・紙のの防水剤として使われてきた。クロムメッキ、フォトグラフィー・フォトリソグラフィー、消化剤(あわ)、航空機の油圧用作動油などにもより少量が使われている。

 欧州議会案の下では、PFOSとその関連物質は、重量で0.0005%以上の濃度の物質または調整品の成分としての販売と使用が禁止される。また、PFOSの販売は禁止され、それから作られる半完成品・物品への使用も、重量濃度が0.1%以上であれば禁止される。ただし、繊維とその他のコート品への使用については、PFOSの量がコートされるもの1m2あたり1マイクログラムー10-6グラムー以上の場合にのみ禁止される。

 フォトリソグラフィー微細加工のためのフォトレジストまたは反射防止コーティング、フィルム、紙、プリント基板に用いられるフォトグラフィックコーティングの生産に必要な物質または調整品、クロムメッキのための反応抑制物質や電気メッキで使用される湿潤剤、航空機用の湿潤剤などは、保健及び環境リスク科学委員会の意見がこれらに使用されるPFOSなどは容認できないリスクを呈するものではないとしており、少量のエッセンシャル使用は例外となることが予想されるという。

 欧州委員会が当所提案していた消化剤に関する例外扱いは取り下げられた。すべてがPFOSを含んではならない。2007年早期と予想される指令の発効前に販売されたものは、発効後54ヵ月は使用できる。加盟国は、発効2年後には、例外に服するクロムメッキ加工を掲載した目録、使用され・環境に放出されるPFOSの量、消化剤の既存ストックを欧州委員会に知らせねばならない。

 欧州委員会は、新たな情報に照らして例外を見直すときには、より安全な代替品の使用が技術的・経済的に実行可能になり次第、PFOSの使用を廃止することを保証する。また、エッセンシャル使用にかかわる例外は、より安全な代替品が存在せず、それを見つけ出す努力が行われてきたこと、PFOSの環境への放出が利用可能な最善の技術により最小化されてきたことが報告された場合にのみ、継続されるように保証する。

 PFOS等の難分解性フッ素化合物は、世界中で環境、動物、人間を汚染していることが報告されてきた。EUのみならず、北米でも規制強化に向けた動きがある。しかし、わが国では、製造・輸入数量の届出、取扱い方法に関する指導と助言等の遵守、有害性調査の実施と報告だけが要求される第二種監視化学物質に指定されただけで、それ以上の規制措置は一切ないままである。

 (PFOS等をめぐる諸問題の詳細は、化学物質問題市民研究会地球を汚染する過フッ素化合物類PFCs の問題を参照されたい)