EU化学物質法(REACH) 3年半の戦いは化学産業が勝利 骨を抜かれて成立へ

農業情報研究所(WAPIC)

06.11.5

  欧州議会と各国閣僚の間の厳しい対立で廃案さえ予測されていたEUの”化学物質の登録・評価・認可”(REACH)”に関する法律が最終的に採択される見通しとなった。欧州議会 側が妥協、11月30日に、閣僚理事会を代表する現在の議長国・フィンランドと欧州議会の環境委員会議長の間で合意が成立した。12月13日に欧州議会で最終的に採択される 見込みという。

  European Parliament:REACH - deal between MEPs and Council,12.4

 欧州委員会は、これは健康と環境に関する現在の状況の顕著な改善をもたらすとと同時に、ヨーロッパ化学産業の競争力を防衛し、また革新を促すと大歓迎している。

 Commission reaction to REACH agreement,Midday Express of 2006-12-04

  しかし、この妥協で、法案の核心部分が骨抜きにされてしまった。マスコミ報道によると、癌、生殖問題、人体への蓄積を引き起こす最も危険な物質は、@適当な代替物質か技術が存在しない、A社会的・経済的利益がこれら物質の人間の健康と環境へのリスクを上回ることが立証される、Bリスクが適切に管理される、という三つの条件を満たさないかぎり、許可されないという10月に欧州議会環境委員会が採択した規程は消えてしまう(欧州議会委員会 強力な化学物質規制(REACH)法案最終版を採択,06.10.11)。これら危険物質の使用は禁止されることなく、今後も続けられる。3年半に及んだドイツ等ヨーロッパと米国・日本等の化学企業と環境団体の戦いは、遂に企業側の勝利に終わった。

 地球の友・ヨーロッパ、WWF、グリーピース等の環境団体は、「REACHはもともと、化学物質に関する知識の欠如を埋め、化学物質管理の有効で整合的なシステムを確立するために構想された。しかし、既に数千もの化学物質が健康と安全に関する情報を提供するという要件を免除されており、高度に懸念される化学物質のシステマチックな代替もない。これは過ぎた妥協で、REACHは現在の立法にいかなる真の改善ももたらさない。ヨーロッパが安全な化学物質に向けて先導する機会が失われたのに加え、人間の健康と環境の保護を怠るREACHは化学産業とヨーロッパの規制者に対する市民の信頼をさらに損なうだけだろう」という声明を出した。

 REACH, a deal too far,06.12.1

 史上最大の環境立法と鳴り物入りで始まり、3年半に及んだ欧州委員会の取り組みは一体何だったのか。大量の化学物質が人々の健康と環境を害し続ける現状は、実質的には何も変わらないだろう。

 関連ニュース
 Europe poised to put tough chemical laws in place,New Scientist.com,12.1
  Swedes criticise agreement for new EU chemicals agency,Radio Sweden,12.1
  EU reportedly reaches agreement on chemical legislation,Helsingin Sanomat,12.1