GM作物拡大で除草剤使用が増える米国 予算不足で農薬使用調査を打ち切り

  農業情報研究所(WAPIC)

08.5.29

   遺伝子組み換え(GM)作物の導入と拡大で米国における農薬使用量はどう変わるのだろうか。この問題に対する確かな回答は未だない。しかし、少なくとも除草剤に関しては、必ずしも減少に結びついておらず、かえって増大している可能性が高い。米国農務省(USDA)農業統計局(NASS)の調査データ*に基づく文末に掲げた図がそれを示唆している。米国にGM作物の商業栽培が導入されたのは1996年だが、とりわけ2000年代に入るとグリホサート (ラウンドアップ)の使用量が急増傾向を示し、他の除草剤の減少傾向も見られない。 除草剤耐性GM作物の拡大に伴って広大な土地で専らグリホサートが常用されるようになり、雑草の除草剤耐性が発達、次第に多量の薬を散布しなければならなくなっているからと見られる。  

 *http://usda.mannlib.cornell.edu/MannUsda/viewDocumentInfo.do?documentID=1560

 このように、農薬使用の動向の的確な把握の必要性が以前に増して高まっているまさにそのときに、この必要性に唯一応えてきたNASSが、予算不足を理由に農薬使用に関する調査を打ち切るという。これを報じるサクラメント・ビー紙は、「今週発表された2007年の調査は、全国の綿花畑における単位面積あたりの除草剤使用が過去6年で53%も増えたことを示している。このようなトレンドを将来追跡することは、USDAのデータなしでは、基本的に不可能になる」と言う。

 そして、環境・消費者団体だけでなく、多くの農業関係団体も、NASSの情報は農薬に関する政策論争や安全性論争において有益だったと、調査打ち切りに反対しているという。

 USDA to end surveys of farm pesticide usage,Sacramento Bee,5.24
  http://www.sacbee.com/agriculture/story/963306.html

  穀物・食料品価格の高騰で米の消費動向が注目を浴びるなか、突如、米の消費動向調査を打ち切った日本の農林水産省といい(農水省 米消費動向調査を廃止 食料自給などどうでもいい?,08.5.23)、官僚たちは社会が今何を必要としているか、まったく分かっていないようだ。