カナダ ビスフェノールAを毒物指定 含有哺乳瓶禁止や環境放出規制を提案

農業情報研究所(WAPIC)

08.10.22

 カナダ政府が10月18日、環境ホルモン物質とされるビスフェノールA(BPA)を国の毒物リストに加える最終リスク評価結果と、これに基づくリスク管理措置を提案した。BPAを含むポリカーボベート哺乳瓶の輸入・販売・広告の禁止や環境中に放出されるBPAの量の制限などを含むリスク管理案が、今後6ヵ月間のパブリック・コメントに付された。

 Proposed Risk Management Approach for Phenol, 4,4'-(1-methylethylidene) bis (Bisphenol A) Chemical Abstract Service Registry Number (CAS RN): 80-05-7,Environment Canada,08.10
 http://www.ec.gc.ca/substances/ese/eng/challenge/batch2/batch2_80-05-7_rm.cfm

 リスク評価は一般の大人にはリスクはないとしている。リスク評価の焦点は新生児や18ヵ月以下の乳幼児への影響にが当てられたが、すべての年齢のカナダ人に対する健康リスクも考慮されたという。 

 新生児と乳幼児への主要暴露源は、高温に曝されるポリカーボネート哺乳瓶の使用と、缶から乳幼児用調合乳へのBPAへの移動を通してであるとされた。そして、新生児と乳幼児への暴露は影響を引き起こすレベルより低いが、低レベルでも影響があり得ることを示すいくつかの研究から生じる不確実性のために、政府は幼児と低年齢の子供の保護を強化する。

 他方、カナダ環境省の科学者は、廃水、埋立地からの浸出などを通してBPAが環境に入っていることを発見した。酸素欠乏状態では環境中での分解速度は遅い。分解の遅れとカナダにおける広範な使用状況を重ね合わせると、長い時間を経て水中に蓄積され、魚やその他の生物に害を及ぼす可能性がある。

 こうしては、次のようなリスク管理措置が提案された。

 −ポリカーボベート哺乳瓶の輸入・販売・広告の禁止。

 −缶詰調合乳については、缶から調合乳に移動するBPAの量を最小限にするために、この量に関する厳格な目標を開発する。一般の缶詰食品についても、同様な目標を設定する。

 −環境への放出については、これを最小限にする規制を課すことを考える。規制案は24ヵ月以内に発表される。規制は、@排水の最大限BPA濃度を設定し、ABPAが使用される施設で最善の管理法が採用されるように管理システムの実施を義務付ける。管理システムには、@BPAの環境放出から生じる悪影響に対する環境保護確保の手続き、A環境保護に関して適用される法律の遵守を監視し、確保する措置、B検証プロトコルが含まれる。

 その他、BPAに関する情報収集、監視、研究に関する措置も提案されている。 


 これが実施されれば、カナダは、BPAを規制する世界最初の国となる。EU、米国、日本も、何らかの対応を迫られるだろう。カナダ保健省もBPAの大人へのリスクは否定したが、これについてもなお不確実性は残る。最近では、成人の心臓病、糖尿病、肝臓異常との関連を示す研究も現れている1)。乳がん治療に使われる抗がん剤の効果を殺ぐという研究もある2)

  日本の厚生労働省や食品安全委員会は、カナダの対応やこれらの研究をどう受け止めるのだろうか。

 1)Iain A. Lang et al,Association of Urinary Bisphenol A Concentration With Medical Disorders and Laboratory Abnormalities in Adults,Journal of the American Medical Association, Vol. 300 No. 11, September 17, 2008
    http://jama.ama-assn.org/cgi/reprint/300/11/1303?maxtoshow=&HITS=10&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=BPA&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

  2)University of Cincinnati:Bisphenol A Linked to Chemotherapy Resistance,08.10.8
     http://healthnews.uc.edu/news/?/7560/

 関連情報
 
カナダ ビスフェノールA入り哺乳瓶禁止へ 米国でも癌等との関連を認める報告書,08.4.21