米国FDAのBPA安全性評価は欠陥だらけ 全面的に見直せー独立専門委員会

農業情報研究所(WAPIC)

08.10.29

  10月28日、ビスフェノールA(BPA)を食品容器に使うのは安全とする米国食品医薬局(FDA)の安全性評価案は欠陥だらけとする独立専門委員会の報告書が公表された。

 http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/08/briefing/2008-4386b1-05.pdf

 報告の要点は次のとおりだ。

 ・FDAの評価が食事を通しての子供の暴露に焦点を当てたのは妥当だが、この評価は累積的暴露や新生児の特異なリスクを考慮することで強化されるべきである。

 ・暴露評価については、「適切な数の乳児用調合乳サンプルを欠き、またサンプルの多様性を考慮するよりも平均値に依存している」などの重要な限界がある。

 ・評価で利用するデータを選別するために適用される基準が合理性と科学性を欠いている。特に多数の非GLP(優良試験所基準)研究が除外されるのには同意しない。一貫し・信頼できる基準は、ヒト生殖リスク評価センター(CERHR)により適切と判断される研究を利用すべきである。

 加えて、評価案が起草されたのちに発表された成人や動物への影響に関するいくつかの研究も(参照:カナダ ビスフェノールAを毒物指定 含有哺乳瓶禁止や環境放出規制を提案の注)最終評価では考慮されねばならない。

 ・評価は、暴露と影響のどちらについても、推定の不確実性の適切な特徴づけを欠いている。

 ・不確実性要因も含めた定性的・定量的情報からして、FDAが適切として定めた安全係数は、実際には不適切である。

 要するに、FDAは利用でき、信頼できるすべての科学的証拠を考慮しなかった、評価は全面的に見直せということだ。

 FDAは10月31日に科学委員会によるこの報告の検討を行う。28日のFDAの声明は、BPAの低レベルの暴露の影響に関するいくつかの研究が提起する不確実性のために、追加的研究は有用と認めた。[報告は、FDAは、ラットを使った比較的限られた研究に依拠して低レベル暴露は安全と結論したと指摘している]

 しかし、「消費者は、利用可能なすべての証拠に基づく米国、カナダ、ヨーロッパ、日本の規制当局間の現在のコンセンサスは、食品包装を通してのBPAの暴露の現在のレベルは、乳幼児を含む人々一般に直接的(immediate)健康リスクを生じるものではないということだ」と知るべきだと言う。

 FDA Statement on Release of Bisphenol A (BPA) Subcommittee Report,FDA,10.28
 http://www.fda.gov/bbs/topics/NEWS/2008/NEW01908.html

 FDAがカナダのようなBPA直接規制に乗り出すことはありそうにない。仮に一から評価をやり直すとしても、規制が検討されるのは何年も先のことになる。