BPA 微量でもラットの腸に問題を引き起こす フランス研究チームが新発見

農業情報研究所(WAPIC)

09.12.16

 フランス国立農学研究所(INRA)の研究チームが、これまで誰も着目してこなかったビスフェノールA(女性ホルモンであるエストロゲンを擬態する環境ホルモン、BPA)が腸に与える影響に関する初めての研究を行った。人間に無害に見える量の10分の1の微量のBPAを経口で与えたラットを使った研究という。

 12月14日の全米科学アカデミーProceeding(PNAS)に発表されたこの研究によると、BPAは腸壁の透過性を減らし、水の停留を促す可能性があることが確認された。また、内臓の痛みに対する感受性を高める一方、炎症に対する免疫反応が減退した。

 さらに、子宮でBPAに曝され、その後生まれたラットの腸が、成熟後、厳しい炎症に見舞われるリスクも高まるらしいことも確認された。研究者は、腸の透過性の減少が免疫システムの働きやその発達を抑えるのではないかと推測する。

 但し、こうした結果は、人間にはそのまま適用できるわけではない。研究者は、人間にも同様の影響があるかどうか、一層の研究が必要としている。

 Eric Houdeau et al.,Impact of oral bisphenol A at reference doses on intestinal barrier function and sex differences after perinatal exposure in rats,PNAS Early Edition,December 14, 2009
  http://www.pnas.org/content/early/2009/12/10/0907697107.abstract

 なお、BPAは多くのプラスチック製品に含まれ、このようなプラスチックが多くの飲食料品の容器や包装資材として使われ、BPAが飲食料品に溶け出すことから、現代人は毎日、否応無しにBPAを食べさせられている。カナダ政府はBPAを含むポリカーボベート哺乳瓶の輸入・販売・広告の禁止や環境中に放出されるBPAの量の制限などの規制に向けて動いているが(カナダ ビスフェノールAを毒物指定 含有哺乳瓶禁止や環境放出規制を提案,08.10.22)、欧米日本政府の動きは鈍い。