フランス食品衛生安全機関 ネオニコチノイド系殺虫剤:Cruiserの販売を容認 但しミツバチの暴露は最小限に

農業情報研究所(WAPIC)

09.12.18

 フランス食品衛生安全機関(Afssa)が12月15日、ネオニコチノイド系殺虫剤の一種である”Cruiser”の販売許可の是非を問うフランス食料農業漁業省の3度目の諮問に答える意見を発表した。2007年と2008年の12月に出された意見と同様、その販売許可を認める。ただし、ミツバチのこの殺虫剤への暴露のリスクを減らすために、利用分野を制限するとともに、非常に厳格な利用条件を課すべきだという。

 Dossier Cruiser : l'Afssa rend un avis favorable sous conditions d'utilisation strictes,Afssa,09.12.15
  http://www.afssa.fr/PM91003601.htm

 フランス食料農業漁業省は2004年7月、ミツバチの大量死に関係しているとして、イミダクロプリドを活性成分とするネオニコチノイド系殺虫剤:Gaucho(ガウチョ)に対する以前の販売許可を取り消す決定を行った。これを不服とするバイエル・クロップサイエンス社とトウモロコシ生産者団体は、決定の執行停止と取り消しを求めてコンセイユ・デタ(政府が用意する法令案の諮問に応じるととも、行政裁判の最上級裁判所として行政機関の行動の是非も裁く)に提訴した。しかし、コンセーユ・デタは、2006年4月、この訴えを退けた。これにより、ガウチョ販売の禁止が最終的に決まった(一部に、フランス最高裁が禁止したという情報が流れているが、上記のとおり、これは不正確な情報である)。

 同じくネオニコチネイド系であるけれどもチアメトキサムを活性成分とするCruiserについては、やはりミツバチの大量死に関係していると、養蜂業者等が禁止を求めてきた。しかし、条件つき使用のミツバチ等への影響を監視、新たな証拠が出るに応じて規制の修正を考えるべきというAfssaの意見に基づき、年々販売許可が更新されてきた。今回は、2008年以来の監視から得られた新たなデータも考慮に入れて検討したが、結局は販売許可を認めるということになったという。

 とはいえ、特にミツバチの暴露を減らすために、その使用には厳しい条件をつけるべきだという。その条件とは次のようなものである。

 ○播種の際の粉塵の排出と拡散を最大限減らすための処置の活用(粉塵を土壌に推しもどすためのそらし板を付けた空気ポンプ播種機の利用や播種の風が弱いときへの制限)。

 ○種子を薄膜で被覆するというこの製品の革新的性格にかんがみ、被覆の条件に特別の注意を向けねばならない。ヨーロッパ(EU)レベルの現行条件を超える厳しい条件を満たすことが許可の条件となる。

 ○Cruiserで処理する穀粒・サイレージ用トウモロコシと雌穂トウモロコシの種子の播種期間を5月15日までに制限する。

 ○Cruiserで処理する雄穂トウモロコシを播く圃場とミツバチ巣箱の間に3kmの距離を確保する。

 ○処理区域近くの水面レベルの活性物質濃度追跡調査の実施。

 それに加え、新たに設置されることになる養蜂技術研究所(参照:2020年のフランス農業 生産性維持と自然資源・生物多様性の保全,09.3.2)の枠内で、殺虫剤の活性物質と巣箱に存在する様々な病原(寄生虫、ウィルスなど)に対する複合暴露の長期的影響の研究を追求することも勧奨する。

 また、巣箱との間に定められた距離を取ることは実際には難しいから、食料農業漁業省は、スィートコーンや雄穂トウモロコシへの使用は許さないという選択をすべきという。