農業情報研究所環境農薬・化学物質・有害物質ニュース:2010年10月1日

欧州食品安全機関 低用量ビスフェノールAの健康影響はない 

 多くの飲食料品の容器や包装資材として使われるプラスチック製品に含まれ、最近は低用量でも人の健康に悪影響を及ぼす可能性があるという新たな研究が相次ぐビスフェノールA(BPA)について、EUの欧州食品安全機関(EFSA)が、その健康影響に関する以前の評価を改めるには及ばないとする再評価結果を発表した。

 summary:http://www.efsa.europa.eu/en/scdocs/doc/s1829.pdf
  opinion:http://www.efsa.europa.eu/en/scdocs/doc/1829.pdf

 この再評価は、@Stumpによるラットを使ったBPAの発達神経毒性研究*、ABPAのリスク評価に関する最近(2007−2010年)の科学文献及び0.05rという現在の体重1s・1日当たり許容量(TDI)に対するその影響の評価、B0-3歳の子供向け食料品へのBPA を含むすべての製品の禁止というデンマークの措置の根拠をなすリスク評価に関するアドバイスを求めた欧州委員会の要請に応じるものである。

  *A Dietary Developmental Neurotoxicity Study of Bisphenol A in rats. October 2009. Submitted by Polycarbonate/BPA Global Group American Chemistry Council, Arlington, VA, USA.

 利用可能な科学文献のレビューで、担当パネルは人間に関するいくつかの疫学研究がBPA暴露と冠動脈疾患、生殖障害の関連を示唆していることに注目したが、これらの研究の設計はBPAがこれらの健康影響の原因であるか否かの結論を許すものではないとした。

 また、ラットに関するStumpによる研究はBPAが脳組織、運動活性、聴覚性驚愕反応、学習、記憶に何の影響を及ぼさないことを示しているとした。

 デンマークのリスク評価は、Stumpの研究はBPAがこの研究で調査されたタイプの行動に対する有害な影響を及ぼすといういかなる明確な証拠も提供していないが、低用量に曝された一部のラットに見出された学習能力への影響をめぐる不確実性があるとしている。

 パネルはStumpの研究データに欠陥があり得ると認め、EFSAの評価及び方法論ユニット(AMU)に、ラットの実験からの学習・記憶行動の統計的再分析を要請した。この再分析は、結果における高度のバリエーションを発見した。従って、パネルは、学習や記憶に関してこの研究から確定的結論は得られないとした。文献レビューによっても、現在利用できるデータはBPAが学習や記憶のような行動に悪影響を与えるという確かな証拠とは見做せないという。

 結局、2006年の意見で設定され、2008年の意見で再確認されたTDIを見直さねばならないような証拠は確認できなかったということだ。

 ただ、最近の研究に基づき、現在のTDI以下のレベルでの健康影響の不確実性を指摘する少数意見はあった。それでも、これらの研究はTDI引き下げのためには利用できないという点では一致したという。