農業情報研究所環境農薬・化学物質・有害物質ニュース:2013年12月18日

欧州食品安全機関 ネオニコチネイド系殺虫剤がヒトの神経発達に悪影響 許容限度大幅引き下げを勧告

 欧州食品安全機関(EFSA)が12月17日に発表したリポート1)で、最近の研究はネオニコチノイド系殺虫剤であるアセタミプリドとイミダクロプリドが発達中のヒトの神経システムに影響を及ぼすことを示唆していると認めた。

 EFSAは欧州委員会の要請に基づき、これら二つの殺虫剤がラットのニューロンの培養においてニコチンと同類の影響の引き起こすことを発見、ネオニコチノイド系殺虫剤は「ヒトの健康、特に発達途上の脳に悪影響を及ぼす恐れがある」と指摘した東京都臨床医学総合研究所の Junko Kimura-Kuroda等による研究2)(昨年2月、PLoS ONEに発表)等を検討した。

 この研究や既存のその他の証拠を検討に基づき、リポートはこれら二つの化学物質への暴露のさまざまな許容レベルを大きく引き下げるように勧告する。それは、利用可能な証拠は限られており、一層の研究が必要と注意しながらも、いまやすべてのネオニコチノイド系殺虫剤のあり得る発達神経毒性をアセスすべきだと言う。

 1) EFSA assesses potential link between two neonicotinoids and developmental neurotoxicity,EFSA,13.12.17
   http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/131217.htm

 2) Junko Kimura-Kuroda et al,Nicotine-Like Effects of the Neonicotinoid Insecticides Acetamiprid and Imidacloprid on Cerebellar Neurons from Neonatal Rats,PLoS ONE February 29, 2012
   http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0032432

 今までは蜜蜂への悪影響が問題にされ、ヨーロッパでもヒトへの影響は比較的軽視されてきた。「理想」の農薬として開発の先陣を切った日本、農水省もヒトへの毒性は弱いと一向に規制強化に腰を上げない。EUの新たな動き、しかも日本の研究に触発されたこの動きに、農水省にどう反応するのだろうか。

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 L'Europe épingle deux insecticides soupçonnés d'être neurotoxiques,Le Monde,13.12.17