農業情報研究所環境農薬・化学物質・有害物質2019年8月4日

欧州食品安全機関 クロルピリフォスに安全基準なし EUも来年から禁止か

欧州食品安全機関(EFSA)が2日、20201月に承認期限が切れる殺虫剤・クロルピリフォスは、EUにおける承認更新のための立法が要求する基準を満たさないと発表した。

 ピア・レビューは完了していないが、欧州委員会から人に対する健康影響に関する利用可能な評価結果についてのステートメントを求められた。EFSAは、子供への影響を示す疫学データに支えられ、発達期にあり得る遺伝学的影響と神経学的影響についての懸念を認めた。これは、この物質への安全な暴露レベルが設定できないことを意味するという。

Chlorpyrifos: assessment identifies human health effects,EFSA,19.8.2

6月以来、ル・モンド紙その他ヨーロッパの多くの紙誌が、EUは無視しているにもかかわらず、米国で行われた多数の人口を追跡する多くの研究から得られる科学的データは、出生前またはその数ヵ月のクロルピリフォスまたは有機リン化合物への暴露と、IQ低下、精神発達遅滞、ワーキング・メモリー低下、多動性を伴う・あるいは伴わない注意力不足などとの関連性を示していると指摘してきた。

EUも、ついにこれら殺虫剤の使用禁止に踏み切るときが来たようだ。EU8ヵ国は既に禁止に踏み切っている。

Le chlorpyrifos, insecticide toxique, reçoit un avis négatif de l’Agence européenne pour la sécurité des aliments,Le Monde,19.8.2

Chlorpyrifos : les dangers ignorés d’un pesticide toxique,LeMonde,19.7.17

Interdit dans huit pays européens, le pesticide chlorpyrifos traverse les frontières,Le Monde,19.6.17

なお、トランプ政権下の米国では、フルーツ、ナッツ、穀物、野菜など農作物に広く使われ続けるだろう。となれば、日本で禁止されることもないだろう*。日本においても、大規模な疫学調査が実施されることを望む。

E.P.A. Won’t Ban Chlorpyrifos, Pesticide Tied to Children’s Health Problems,The New York Times,19.7.18

EPA will not ban use of controversial pesticide linked to children’s health problems,The Washingon Post,19.7.18

*本物質はハマキムシ類、アメリカシロヒトリ、シバオサゾウムシなどに効果があり、リンゴ、ミカン、カキ、ナシ、茶、芝生、樹木などに用いられている。
 
なお、本物質は製造・使用が禁止されたクロルデンに代わるシロアリ駆除剤として使われ、住宅では土台や柱などの木の部分に吹き付けたり、床下に散布するという方法で用いられてきたが、シックハウス症候群の原因物質の一つと疑われ、2002 7 月の建築基準法の改正によって、本物質を添加した建材の使用は禁止された。また、家庭で用いられる園芸用の殺虫剤にも、本物質を含むものがある(環境省 クロルピリフォス)。