農業情報研究所


気候変動はエコシステムのバランスを崩すーNature誌の研究発表

農業情報研究所(WAPIC)

02.4.11

 来るべき50年の気候変動は微妙なエコシステムのバランスを壊すという研究がNature誌に発表された。この研究によれば、多くの動物種の分布域が狭まり、新たな捕食者が現れる。これは人間に対しても予想できない結果をもたらすことになろう。保護運動や政策形成にも変更を迫る。

 研究は世界中の博物館の標本を利用して1870の哺乳類、鳥類、蝶の地理的分布図を作成、これを各場所の環境に関する情報を結合して、各場所が50年でどのように変化し、各種がどこで生き残れるかを計算した。気候変動に関する二つのシナリオを前提としたが、最も現実的なモデルでは、2055年にはほとんどの動物の分布域が現在より狭まる。種の最大2.4%が生息域の90%を失い、絶滅の危機に瀕する。

 気候変動の影響は山岳地域で最小で、チワワ砂漠のような平地で最大となる(すべての種の半分が変化する)。研究者は、このエコシステムの再編は気候変動の最も重要な帰結であろうという。

 これは保護政策の変更を迫る。現在の地理的に分散した保護区の創設に代えて、種を移動させる保護区のネットワークを作らねばならない。また、現在の保護区はその保護の対象とする種や環境を失う恐れがある。

 Peterson,A.T. et al,Future prjections for Mexican faunas under global climate change scenarios,Nature,416,626-629(2002)
 Climate to change wildlife,Nature news,4.11

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