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米国、有力議員が温室効果ガスの義務的削減プランを提案

農業情報研究所(WAPIC)

03.1.10

 本日付の朝日新聞1面には、環境庁は、2013年以降の温室効果ガス削減方式について、国ごとに削減を義務づける京都議定書方式では米国や途上国の賛成が得られる見込みがないと判断し、より柔軟性のある枠組みの研究を開始すると報じられている。米国ブッシュ政府の京都議定書拒絶のかたくなな態度はよく知られた事実であり、世界最大の温室効果ガス排出国の米国が参加しない取極めの実効性が乏しいことも確かである。従って、環境庁の判断は妥当なようにもみえる。しかし、ブッシュ政府の削減義務づけ反対の態度がどこまで続けられるのかと疑う余地がまったくないわけではない。1月8日、米国議会の有力議員が義務的削減に向けての真剣な取り組みを開始したと主要メディアが報じている(US may be forced to cut gas emissions,FT com,1.9Reductions Sought in Greenhouse Gases: Criticizing Bush, Senators Would Set Deadlines,The Washington Post,1.9など)。

 報道によると、8日の上院商業・科学・運輸委員会のヒアリングで、もうすぐ商務委員会の委員長に就く一匹狼の共和党・マケイン議員と民主党・リーバーマン議員が、超党派で米国発電所や諸産業に対して温室効果ガス削減の義務的目標設定を要求するプランを明かにした。これに続き、上院の少数派リーダーであるダーシュ議員と前上院環境・公共事業委員会委員長・ジェフォード議員も気候変動・大気汚染問題とクリーンエネルギー促進に取り組む「地球気候安全保障法」のプランを提案した。

 マケイン・リーバーマンのプランでは、企業(農業は除外)は2010年までに温室効果ガス排出量を2000年のレベルまで削減し、さらに2016年までに1990年レベルまで削減することを要求される。温室効果ガス排出者は排出目標を達成した排出源から排出権を購入できる。また、二酸化炭素を固定するための土壌管理技術を使用する農民に対しては、過剰な量の温室効果ガスの排出者に販売できる炭素クレジットの獲得を可能にする。ダーシュ・ジェフォードのプランの下では、温室効果ガス排出の全国登録簿が作成される。それは連邦政府の温室効果ガス排出量を2013年までに1990年レベルに削減することも勧告する。

 ワシントン・ポスト紙によれば、ダーシュ議員は、「政府は排出量削減のためにほとんど、あるいはまったく何もなし得ないと示唆している」、「上院は、大統領がそうしようとしないから、地球温暖化問題に取り組むために米国をリードする」と言う。また、マケイン議員は、政府は温暖化の原因に関する科学的不確実性を何もしない口実として利用したと非難している。

 どちらのプランも、ブッシュ政府が米国経済に不公平な負担を課すとして京都議定書を拒否して以来の初めての真剣な取り組みである。政府とジェフォードを継いだ上院環境・公共事業委員会委員長は、自主的取り組みを支持して強く反対するであろうが、下院科学委員会委員長(共和党、ニューヨーク)やその他の中道派下院議員も、ブッシュ大統領の自主的取り組みにしびれを切らし、温暖化と闘うための厳しい手段を支持しているという。