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オーストラリア:2002年干ばつは地球温暖化と関連ーWWF

農業情報研究所(WAPIC)

03.1.14

 13日、世界自然保護基金(WWF)が、2002年のオーストラリアの干ばつの激しさは人間がもたらした地球温暖化が重要な要因であるという新たな研究報告(Global Warming Contributes to Australia's Worst Drought )を発表した。報告は、2002年の干ばつを1950年以後の他の四つの大きな干ばつと比較したもので、高温が土壌、水路、植物からの蒸散を顕著に増大させたという。それは、高温と乾燥の条件が以前の干ばつよりも大きなブッシュ・ファイヤーの危険を生み出し、また干ばつの厳しさはオーストラリア農産物の40%を生産するマーレイダーリング流域で強まったと警告している。

 WWFのプレス・リリース(New report shows global warming link to Australias worst drought)が要約するところでは、2002年のオーストラリアはかつてない3-11月の日中平均最高気温を記録し、長期的平均よりも1.6℃、以前の最高記録よりも0.8度高かった。マーレイダーリング流域は、1950年以来の干ばつ時よりも1.2℃高い平均最高気温を経験した。

 報告の著者たちは次のように言っている。

 オーストラリア全体が昨年経験した高温は、自然の気候変動だけでは説明できない過去50年にわたる国の温暖化傾向の一部をなす。この温暖化の大部分は、発電のための化石燃料燃焼、輸送、植物の皆伐などの人間活動から生じた温室効果ガスの増加に起因すると見られる。1950年以来のオーストラリアの気温のトレンドは、気温がどのように温室効果ガスの増加に反応するかという気候モデル研究とマッチしている。これは、人間がもたらした地球温暖化が明確に観察できるオーストラリアで初めての干ばつと考えられる。

 2002年の干ばつはエル・ニーニョと関連した自然の気候変動と関係しているけれども、2002年の干ばつの気温は、平均最高気温が他の干ばつ時の気温よりも1℃以上高く、1950年以来の四つの干ばつに比べて異常である。エル・ニーニョだけが原因とは言えない。

 報告は蒸散率に関する新たなデータを含み、降雨の減少と蒸散の増加が農業生産を低下させ、農民の輸出所得を低下させたと言う。地球温暖化はオーストラリア農村民の生計に悪影響を与えつつある「現実」であり、WWFはハワード首相にさらなる経済と環境の災厄を防止するように要請している。

 オーストリア政府は、米国政府とともに、温室効果ガスの削減目標を定めた最初の国際協定である京都議定書の批准を頑強に拒んでいる。