地球温暖化、欧州北部は氷河期に、世界中に干ばつ:農業に破滅的影響―新研究

農業情報研究所(WAPIC)

04.1.27

 スコットランドがこの冬一番の寒波に襲われている。北部の一部の気温は氷点下5-10℃にまで下がり、一週間は氷点以上に上がりそうもなく、イギリス全体に広がるだろうと予想されている。フランスもスイスも大雪で大混乱だ。しかし、こんな寒さも今後長期にわたって続く氷河期の気候に比べれば穏やかなものかもしれない。英国”Independent”紙の25日付の記事(Global warming will plunge Britain into new ice age 'within decades')によると、スウェーデンに本拠を置く国際岩石圏−生物圏プログラム(IGBP)が、地球温暖化により、イギリスは我々が生きている間に氷河期に突入する恐れがあるという新研究を発表した。

 これが現実となれば、イギリスとヨーロッパ北部は突如として同緯度のラブラドールと同じ気候に見舞われる。農地はツンドラと化し、冬の気温は氷点下20℃まで下がるだろう。この変化は、西ヨーロッパに温暖な気候をもたらすメキシコ湾流がストップするためにおきる。世界中の科学者がかかわるこの新研究は、この過程が既に始まっていることを示唆している。

 科学者たちは、グリーンランドからアルゼンチン最南端のティエラ・デル・フェゴ島までの大西洋の過去50年にわたる海水の組成を研究した。熱帯と亜熱帯における塩分濃度が非常に高まり、極地に近づくに連れて薄くなっていることがわかった。メキシコ湾流は、冷たく、塩分濃度の高い水が北大西洋に沈み込むことで引き起こされる。これが水面表層の暖かい水を北方に運ぶ。ところが、地球温暖化により熱帯水域からの蒸発が増大、温帯・極地地域での降水を増やし、暖かい水の塩分濃度を一層高め、冷たい水の塩分濃度を引き下げる。極地の氷の融解がさらに塩分を薄める。この傾向は、最も暑い10年が記録された1990年以来、加速されているという。

 科学者は、この転換が一度起これば、少なくとも数十年、場合によっては数世紀続くだろうと言う。1万2,700年前、メキシコ湾流が突然変わったとき、ヤンガードライアスとして知られる1,300年にわたる寒冷期が訪れた。これにより、イギリスは永久凍土に覆われ、夏の気温も10度にまで下がり、氷山がポルトガルまで南下した。もしそうなれば、ヨーロッパは現在の人口を維持できなくなる。それは同時にアジア、アフリカ、アメリカ西部を含む地球全体に干ばつをもたらす。一部科学者は、これは最悪のシナリオで、寒冷化はそれほど劇的ではなく、一層寒冷な状態と一層温暖な状態が数十年のわたり交代で現われるだろうと言う。しかし、それでもこれは農業と耕作にはほとんど破滅的だろうとも言う。

農業情報研究所(WAPIC)

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