中国南部の水不足が深刻化 農業・経済・社会発展の重大な足枷に

農業情報研究所(WAPIC)

05.5.24

 中国南部が厳しい水不足に見舞われている。24日付のChina Daily紙の報道は、広東省西部では打ち続く日照りのために80万人が飲み水を欠いている、特に鎮江と茂名の状況がひどい、多くの家畜が砂漠のような条件のために死んだと伝える(Drought haunts western Guangdong,China Daily,5.24)。

 鎮江の貯水量は474百万立方bで、昨年の950百万立方bの55.9%にまで落ちている。農業用灌漑には230百万立方bが配分されるだけだ。今後数ヵ月の間に干ばつが悪化するれば、秋の収穫も影響を受けるだろうという。鎮江の21の中規模ダムのうちの6、598の小規模ダムのうちの362が干上がっている。その貯水量は1日に10百万立方bの割合で減りつつある。

 農業が地域経済の基幹をなす鎮江と茂名の20万fの農地が影響を受けている。柑橘園の樹が萎え始めた一農民は、今年の干ばつは収穫と収入に確実に影響すると言う。農業と農村経済・社会への影響は避けられそうもない。18日付の同紙の報道は、広東省では今が田植えシーズンで、50年来の最悪の干ばつから回復しつつあり、種まきを始めることができるようになった、だが、雨はあったが十分ではない、貯水池に十分な水がないと農民が水不足に悲鳴を上げていると報じている(Drought strikes hard in southern China,China Daily,5.18)。

 この報道によると、広東省では昨年、100万の人々が十分な飲み水を欠いた。隣の广西では貯水池が干上がった。首都・廣州の北西70kmの清遠地域の農民は、「冬は非常に厳しかった。ここに200ムー(1ムーは6.67アール)の土地を持っているが、水がない。昨年は大枚をなくした。たくさんの人が労働者として働きに行った。毎年悪くなるようだ。でも我々に何ができる?」と言っている。その3人の子供は、建設労働者として町に出た。彼自身も工場に働きに出ることを考えている。稼ぎのない農村は空っぽになる。

 先の24日の報道によると、鎮江市政府は災害に対処する緊急措置を取っている。50万の兵士・役人・住民が干ばつとの闘いの前線についている。住民に水を供給するために、昼夜、20万のポンプが働いている。昨年末以来、市政府は600万ドル(6億3000万円)を支出した。昨年11月以来、人口降雨のために100のロケットを打ち上げた。しかし、9月以来の降水は600ミリ、前年よりも75%少ないという。一部地域は、238日間、まったく雨なしだ。

 年々ひどくなる干ばつが水不足の一因であることは間違いない。しかし、厳しい水不足の原因には、急速に増大する水需要もあるようだ。先の18日付の報道では、「中国の水危機」の著者である環境運動家のMa Junは、「広東と珠江 デルタ地域では人口が急増している。90年代を通しての経済ブームも水消費を急増させた」と言っている。労働集約産業と他省からの移住労働者で1億1000万に膨れ上がった人口を主因に、広東の水利用は中国の他の地域のおよそ1.4倍になっている。

 作物が乾き、魚養殖場が干上がるだけではない。水不足で水力発電の能力が減る一方で、電力消費も急増している。昨年、工場は夜間のみの操業を余儀なくされ、政府は食堂やホテルの電気照明の制限に追い込まれた。今年の初めには電力供給制限が始まった。干ばつも一因となり、一日当たり500−600メガワットの電力が不足した。エコノミストは、省の発電能力は今後数年間にわたり3000−5000メガワット不足すると予想する。中国全体では、今年の夏の電力不足は政府予測を20%上回り、30ギガワットに達すると見込まれる(China's summer power gap seen higher,China Daily,5.24)。40ギガワット不足した昨年と同様な事態が予想される。

 水不足は、作物・家庭から発電・工場まで、万事に影響を与えている。今年2月、政府は2010年までに水力発電と風力発電の能力を6万メガワットに引き上げ、更新可能なエネルギーで必要量の10%を賄うことを目標に、電力供給者に更新可能なエネルギーの一層の購入を強制、代替エネルギー開発に財政的刺激を与える法律を制定した(中国 更新可能エネルギー促進法を採択 それでも原発依存は進むだろう,05.3.1)。しかし、干ばつ続き、電力需要が今のペースで増え続けるかぎり、水不足は当分の間、中国の経済・社会発展の重大な足枷となり続けるだろう。