インド 温暖化が小麦・米生産とインフラに甚大な影響、マラリアも増えるー英・印共同研究

 農業情報研究所(WAPIC)

05.9.10

 9月7日、北京における中国−EUサミットに続き、インド−EUサミットがニューデリーで開かれた。政治・経済・文化等広範な領域での協力関係を強化しようとするものだが、その中には中国との間でも合意した気候変動への取り組みにおける協力強化も含まれる。

 EUが発表した”インド−EU戦略的パ−トナーシップ:共同行動計画”(http://ue.eu.int/ueDocs/cms_Data/docs/pressData/en/er/86130.pdf)によると、気候変動問題に取り組むためのすべての国による緊急行動の必要性を認め、京都議定書締約国に対してそれぞれに義務付けられた目標を達成するように要請し、京都議定書以後の国際交渉で緊密に協働することに双方が合意[中国との合意に続くこの合意は、米国包囲網を一層強化するものと言えよう→EU、中国との気候変動パートナーシップに合意 京都議定書後温暖化対策に関する議論をにらむ,05.9.6]、その上で、気候変動への挑戦において特に重要とみなされるクリーンな技術の開発と普及、クリーン開発メカニズム(CDM)の実施、気候変動への適応の改善、気候変動とその社会経済的影響を予測するための科学的・技術的・制度的能力の強化などの分野での協力を強化するという。

 フィナンシャル・タイムズの報道によると、このサミットに向け、気候変動がインド農業とインフラストラクチャーに甚大な影響をもたらすというイギリスとインドの科学者による3年間の研究結果が提出された(climate change 'will hit Indian crop yields',Financial Times,9.9,p.3)。それによると、気候変動の結果としてインドの米、小麦収量が減少、沿岸での洪水やマラリア、干ばつが増えるという。一部地域では干ばつが長引き、他の地域では降水が増えて洪水のリスクが高まる[今年のムンバイ=ボンベイを中心とする大洪水は1000人もの死者を出した]。

 エリオット・モーレイ英国環境担当相は、「インドにおける気候変動は、既に急速な開発による途方もない圧力に直面している国にさらなるストレスをかける。経済成長・開発と変化する資源のバランスを取るために、気候変動とその人々、経済、生計への影響を知ることがが重要になる」と述べたという。

 気温の2℃から4℃の上昇は、小麦が栽培できる限界地域を数百マイル北に押し上げる。多くの農民は作物を転換せねばならず、穀物生産が減少する。亜熱帯地域での小麦収量の減少は1.5%から5.6%の間になりそうだが、熱帯地域ではもっと大きく減少する。米収量も減少し、気温上昇が害虫を増やしもする。

 温暖化はマラリアの増加も意味する。マラリアは、湿度が60%から80%、気温が25℃から30℃のときに最も多く発生する。インド北部の大部分では、現在のマラリア発生期間は数ヵ月だが、温暖化により多くの人々が1年中マラリアのリスクに曝されることになる。

 インドの気候変動に対する取り組みも緊急を要する。