豪医療・環境団体 温暖化による熱死者・感染症増加に警告ー排出削減国家計画を要請

農業情報研究所(WAPIC)

05.9.23

  地球温暖化は、暑熱で年に1万5000人を殺し、紛争と数千万の人々の移住を引き起こすだろう。それは一層の干ばつ、洪水、台風にもつながり、さらにマラリア、デング熱、コレラなどへの感染を増やす。

 オーストラリアの主導的な医療団体であるオーストラリア・メディカル協会(AMA)と環境保護団体のオーストラリア保全財団(ACF)がオーストラリア・ナショナル・ユニバーシティーに委嘱した「オーストラリアにおける地球温暖化の健康影響」に関する報告(*)がこのように警告している。報告は、厳しい措置が取られても一部の気候変動の影響は不可逆的だが、影響緩和のために、政府が直ちに温室効果ガス排出の削減に取り組むことを要請する。

 *Climate Change Health Impacts in Australia; Effects of Dramatic CO2 Emission Reductions
  http://www.ama.com.au/web.nsf/doc/WEEN-6GFBDE/$file/Climate_Change_Health_Impacts_Report.pdf

 報告によと、地球温暖化のためにロスリバー熱やデング熱、マラリアのような蚊が媒介する感染症の発生が増加する。直ちに排出削減を始めなければ、暑さに関連したオーストラリア人の死者の数は、現在の年に1100人ほどから8000人−15000人に増える。貧困が増幅、高温に曝される地域から人々が逃げ出すから、東南アジアへの移住が増える。伝統的食生活を送るアボリジニなどの多くの遠隔地集落は、野生動物・魚・植物の量と分布の変化のために健康が保ち難くなる。これが水不足と重なれば、これらの集落やその他の孤立した集落にとって生態的災厄が起きる可能性がある。

 作物収量はアジア北部では増加するが、アジア南部では減少、ここでは洪水、干ばつ、森林火災、熱帯サイクロンが頻発するようになる。人々のストレスは政府に向けられ、最悪の場合には、国の失政と大規模な紛争でアジア・太平洋地域に数千万の移住者が生まれ、人権侵害が広がる。

 オーストラリア政府は、米国政府とともに京都議定書批准を拒否、最近、温室効果ガス排出を減らす方法を探索する米国主導の地域気候変動パートナーシップに加わった(米国熱波で37人死亡 米政府は中国・インドを抱き込む京都議定書抹消作戦,05.7.29)。これは、排出削減目標設定を拒否、企業や家庭のエネルギー利用を削減する自主的計画に頼るものだ。両団体は、更新可能なエネルギーの利用の増大、化石燃料へのバイオ燃料の義務的ブレンド、有効な国家排出抑制計画を要求している。

 すべての化石燃料はエタノールを10%含まねばならず、2010年までにすべてのエネルギーの10%は風力や太陽エネルギーなどの環境に優しいエネルギー源に由来するものとせねばならない。

 気候変動の健康への悪影響は既に現れており、悪影響の回避・緩和は時間との戦いと言う。