黄砂が人体に酸化障害ー韓国の研究

農業情報研究所(WAPIC)

06.6.29

  韓国のマスコミ報道によると、近年ますます激しくなっている中国・モンゴルからの砂嵐ー黄砂ーが人間の細胞膜や赤血球、さらにはDNAまでを破壊するに十分な物質を含むという新たな研究が発表された。この研究は、檀国大学とソウル国立大学の二人の教授が率いるチームが、過去3年にわたる尿検査で黄砂が人間に与える障害を測定したものである。尿検査を通じて黄砂の影響を立証した初めての研究という。

 研究対象となったのは、大気汚染が比較的すくない島嶼に住む43人の小学生で、研究チームは2004年春の砂嵐の前後にサンプルを取って影響を調べた。その結果、活性酸素により生成される人体に有害な過酸化脂質が嵐のピーク時に大きく増え、嵐の後に減った。研究者は、砂嵐が人体に酸化障害を引き起こすと結論したという。

 研究チームは、2002年6月から2005年5月まで、ソウルと首都圏の500人の成人の調査も行った。全体で40.2%が黄砂による健康障害を報告した。半島が砂嵐に覆われ始めた最初の三日間に、6.2%の人が眼病に罹り、8%の人が血管病になったと報告した。また、13%の人が風邪症状を訴え、19.8%の人は気管支炎その他の呼吸器障害を蒙った。砂嵐の4日間で、21.1%の人が呼吸器問題を報告した。

 記事によると、中国東部の工業都市からの汚染物質をと合体した最近の黄砂は、農業と工業への損害とともに、呼吸器病や皮膚病の急増を引き起こしているという懸念が高まってきたという。

 Yellow Dust Storms Harmful to DNA,Korea Times,6.28
 http://times.hankooki.com/lpage/nation/200606/kt2006062817383911980.htm

 わが国でも、このような問題が漸く認識されるようになった。中国や韓国ほどではないが、黄砂は年々激しさを増している。中国の砂漠化防止の努力にもかかわらず、この傾向は長期にわたり続くだろう(砂漠縮小の中国 なお遠大な砂漠化との闘い 人類は砂漠化との闘いに勝てるのか,06.5.31)。日本に飛来する黄砂は、中国や韓国で落下した後に残るもっと細かいものだから、一層重大な健康被害も考えられると懸念する人もいる。わが国でも研究を急ぐ必要がある。