英国 最新のフードマイレージ指標発表 食品輸送による温暖化ガス排出が加速

農業情報研究所(WAPIC)

06.7.22

  英国環境食料農村省(DEFRA)が20日、食品輸送の環境・社会的影響(負荷)を示す指標とされる「フード・マイルズ」(日本ではフード・マイレージと呼ばれる)に関する最新データを発表した。

 http://statistics.defra.gov.uk/esg/statnot/FoodTransportIndicatorsSN.pdf

 発表された指標は、このよう影響を測定するための基本的指標とされる都市食品輸送距離、大型貨物車(HGV)による食品輸送距離、航空機による食品輸送距離と食品輸送で排出される二酸化炭素排出量である。食品輸送距離だけでこれらの影響を測るのは単純にすぎ、これらの統計はその変動や消費者の必要に応える能力に関してさらなるテストに服している”実験的統計”であるとされる(注)。

 注:次を参照のこと。

 The Validity of Food Miles as an Indicator of Sustainable Development(DEFRA,05.7)
 http://statistics.defra.gov.uk/esg/reports/foodmiles/default.asp、または
 日本農水省:http://www.maff.go.jp/kaigai/2005/20050810uk51a.htm#chu

 しかし、DEFRAはその「食品産業持続可能戦略」において、英国のフードマイルズは大きく、かつ増加しつつあり、二酸化炭素の大きな排出源となっている(2002年に2000万トンで英国全体の排出量の1.8%)、特に輸送距離当たり排出量が最高の航空フードマイルズが急速に増加しているとして、様々な削減策を追求している。

 ところが、発表されたデータによると、1992年から2004年までに総フードマイルズは13.2%増加している。1992年から2002年までの増加が11.6%で、2002年から2004年までの増加は1.4%にとどまり、増加傾向は鈍化しているように見える。

 しかし、これは、1992年から2002年までに19%増加した都市フードマイルズが2002年から2004年には1%減ったことが大きく影響している。消費者の近場の市場での購入行動が増えたためであろうか、特に普通車の都市フードマイルズは1992年から2002年までに30%増加していたのに、2002年から2004年にかけては6%減った。

 ところが、二酸化炭素排出量が多いHGVの都市フードマイルズは、1992年から2002年までに5%増加しただけだったが、2002年から2004年に1%増加、2003年から2004年にかけては4%も増加している。また、ヴァンの都市フードマイルズも、2003年から2004年にかけて12%増加した。これは、都市フードマイルズの増加傾向の鈍化にもかかわらず、二酸化炭素排出はそれほど減っていないことを意味する。

 さらに1992年から2002年までに3%増えていたHGVフードマイルズは、2002年から2004年までに5%増えた。また、1992年から2002年までに136%(年率で13,6%)の急増を示した航空フードマイルズは、2002年から2004年までに31%(年率で15.5)増加、増加が さらに加速している。

 かくして、1992年から2002年にかけて15%増えたフードマイルズによる二酸化炭素排出は、2002年から2004年には4%(2003年から2004年の1年だけで6%)増えた。フードマイルズによる二酸化炭素排出増加が加速している。

 インディペンデント紙によると、DEFRAのスポークスマンは、政府は食品製造者やスーパーと協働しており、それらが問題に取り組んできた真剣さに感銘を受けてきたと言う。

 しかし、”地球の友”の一活動家は、これらの数字は政府が気候変動に十分に取り組んでこなかったさらなる証拠だ、「これらの数字は、政府が二酸化炭素排出削減目標を失しつつある事実を確認する」ものと言う。

 さらに、スーパーで周年広範な製品を買いまくり、自分の行動とそれが気候変動に及ぼす影響の関係に気づいていない大部分の人々を地方市場に誘うためには、航空運賃を高くすることで製品価格を引き上げるしかないとも言う。

 Cost of food grows to 18m tons of carbon dioxide,Independent,7.21
 http://news.independent.co.uk/environment/article1188874.ece

 とはいえ、政府がフードマイルズの問題に取り組もうとしているだけでも日本よりましだ。日本にはこのような統計データさえない。スーパーの郊外立地を規制しようとする動きはあるが、専ら市街地活性化のためであり、フードマイルズ削減などはまったく念頭にない。

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 地球温暖化防止、旬の地場産食料の消費が重要―英国の研究,03.11.13