農水省 温暖化抑制のために農地への有機物施用目標 どうやって実現?

農業情報研究所(WAPIC)

07.12.13

 農水省が、ポスト京都議定書で農地の温室効果ガス吸収源として位置づけられることをにらみ、土壌管理の目標に有機物の施用目標を盛り込む方針だそうである。12日に発表された同省の試算では、水田に10e当たり1トン、畑に同1.5トンの堆肥を施用した場合、全国の農地に年間220万3000トン(京都議定書による日本の温室効果ガス削減目標の1割)の炭素が新たに貯留されることになるという(「堆肥で炭素貯留 温室効果ガス吸収源に」 日本農業新聞 07年12月13日 3面)。

 炭素を捕獲する新たな有機物が農地土壌に戻されなければ、地球最大の炭素吸収源とされる土壌も炭素排出源に変わるという恐れはずっと前から指摘されてきたことだ。 それでも、化学肥料万能化で、作物残渣等本来は土に戻されるべき有機物の”純粋”廃棄物としての焼却処分等が放置されてきた。ところが、この突然の変心、政官民の癒着構造のなかで違法伐採による森林破壊を放置してきたインドネシア政府が、地球温暖化を止めたければ必要な金を出せと先進国に迫るために、突如として森林保護の重要性を強調し始めたのに似ている(違法伐採を止められないインドネシア 温暖化防止を口実に国際援助増強を要求,07.10.22)。

 それで本当に目標は実現できるのか。どうしたら生産現場がこんな目標を受け入れるのか、当はあるのだろうか。一つ考えられるのは、既に起きているチッソ、カリ、リン等の化学肥料原料の価格高騰、あるいは枯渇で、有機肥料に頼らざるを得なくなるかもしれないということだ。しかし、この場合にも、 必要な量の堆肥原料はどこから、何から調達するのだろうか。そのうえ、これら”廃棄物”を主原料に、2030年には600万klのバイオ燃料も生産せねばならないのだ(土壌有機物増やして温暖化抑制 農林業廃棄物からのバイオ燃料生産は?,07.11.15)。頭のいい役人には、きっと計算ができているのだろうが、凡人には分からないことばかりだ。