気候変動で世界の大河川の流量が減少 将来の食料・水供給に脅威 米国の新研究

農業情報研究所(WAPIC)

09.4.22

 米国チームの新たな研究が、世界最大の人口集中地域の河川の流量が、多くは気候変動が原因で減少しつつあることを明らかにした。これら河川には、中国の黄河、インドのガンジス川、西アフリカのニジェール川、米国南西部のコロラド川などが含まれる。

  チームは世界の925の大河川の1948年から2004年までの流量を調べ、世界最大の河川のおよそ3分の1で大きな変化が起きていることを発見した。流量が減少している河川の数は、流量が増加している河川の2.5倍になる。

 例えば、太平洋に1年間に流れ出す淡水の量は6%、526㎦減った。これは、ミシシッピー川から1年間に流れ出す水量に匹敵するという。インド洋に流れ出す水も3%、140㎦減少した。米国北西部のコロンビア川では、降水減少と西部の水利用増大で、14%も減った。

 ただし、ミシシッピー川が排出する水は、中西部の降水増加で10%ほど増えた。氷が溶けることによる北極海への流入も、10%、460㎦ほど増えた。1070年代以来の急速な温暖化が、米国西部の雪融けと流量ピーク時、あるいはロシア極地やカナダの河川の氷の融解を早めている証拠もある。

 南アジアのブラマプトラ川(ガンジスの大支流)や中国の揚子江など、一部の河川の流量は安定しているか、増えている。しかし、これらの河川の水源となるヒマラヤの氷河が次第に消えつつあり、将来は減少する恐れもあるという。

 研究者は、これらの変化は、ダム建設、灌漑、その他の水利用の影響と重なり、将来の食料・水供給への重大な脅威になると言う。

 Aiguo Dai et al.,Changes in Continental Freshwater Discharge from 1948–2004, Journal of Climate(AMS)
 Abstrcct: http://ams.allenpress.com/perlserv/?request=get-abstract&doi=10.1175%2F2008JCLI2592.1

  UCAR News Release;Water Levels Dropping in Some Major Rivers as Global Climate Changes,4.21
  http://www.ucar.edu/news/releases/2009/flow.jsp

 関連情報
 気候変動と三峡ダムが揚子江に健康リスク 中国科学院報告,09.4.21