米国農務省 気候変動と戦うグローバル研究連合に参画 気候変動を抑えながら食料増産

農業情報研究所(WAPIC)

09.12.17

  ビルサック米国農務長官が12月16日、COP15が開かれているコペンハーゲンで、農業からの温室効果ガス(GHG)排出への理解を深め、これを防止するための世界20ヵ国で構成する”農業GHGに関するグローバル研究連合”(GRA)に参加すると発表した。

 米農務省(USDA)は、農業からくる気候変動を抑えるための今後4年間の研究支出を9000万ドル(約800億円)増額、この研究をGRAへの一助にする。これにより、同じ目的の研究に対する今後4年間の支出は1億3000万ドル以上になる。

 USDAは途上国のGRAへの参加を助ける。GRAは、GHG排出を増やすことなく食料生産を増やす技術と農業方法の研究・開発・普及に焦点を当てる。これは、世界中の農民やその他の土地・資源管理者に移転可能な新たな知識と技術の開発を目指す参加国研究者間のパートナーシップを通して達成される。

 この共同研究から生まれる成果としては、GHG排出と土壌中に貯留された炭素を測定する費用効率的で正確な方法、様々な国で排出を減らし・農地への炭素貯留を増やす新たな農業方法、気候変動を抑えながら収量を維持する農法などが予想される。

 GRAへの参加に合意した国には、オーストラリア、カナダ、コロンビア、チリ、デンマーク、フランス、ドイツ、ガーナ、インド、アイルランド、日本、マレーシア、オランダ、ニュージーランド、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国、ウルグアイ、ベトナムが含まれるという。

 United States Announces Global Research Alliance to Combat Climate Change,USDA,12.16
 http://www.usda.gov/wps/portal/!ut/p/_s.7_0_A/7_0_1RD?printable=true&contentidonly=true&contentid=2009/12/0615.xml

 米国の参加は歓迎すべきことかもしれないが、それは、除草のための耕起を減らすことで土壌からのCO2排出削減に寄与すると喧伝されている除草剤耐性GM作物の格好の売込みの機会を与えるかもしれない。この点に関する十分すぎるほどの警戒が必要だ。米国で起きているとされる農薬使用の激増(米国 GM作物商業栽培で農薬使用量が激増 除草剤耐性大豆農家の将来は経済的に真っ暗,09.11.19)を世界中に広げることになりかねない。

 他方、わが国の温暖化影響評価・緩和・適応のための農水省(技術会議)の技術開発予算はと言えば、たった4億5000万円ほどである(平成21年度概算決定)。