農業情報研究所環境気候変動・災害・砂漠化・水問題等ニュース:2011年11月21日

2010年、温室効果ガスが記録的増加 肥料削減で酸化窒素排出を減らせ 国際気象機関

  世界気象機関(WMO)が11月21日、2010年の大気中の温室効果ガス(GHG)の濃度が産業革命(1750年)以来の新たな記録的レベルに達し、その増加率がますます加速しているという「グリーンハウス・ガス・ブルティン」を発表した。それは、とりわけ、主に肥料の含む窒素の使用の結果としての酸化窒素濃度の急上昇に焦点を当てている。

 http://www.wmo.int/pages/mediacentre/press_releases/documents/GHGbulletin.pdf

 温暖化に最大の寄与をしている人工GHG・二酸化炭素の大気中濃度は1970年以来39%増加し389ppmに達した。これは、主に化石燃料燃焼、森林破壊、土地利用変化のためである。20009年から2010年の間に2.3ppm増加した。これは1990年代の年平均増加(1.5ppm)、過去10年の間の年平均増加(2.0ppm)のどちらも上回る。産業革命が始まる18世紀半ばまでの1万年、大気中二酸化炭素濃度は280ppmほどで安定していた。

 温暖化に二番目の寄与をしているメタンの大気中濃度は、産業革命以前は700ppbほどであったが、1750年以来、大部分は家畜飼養、稲作、化石燃料採掘、埋め立てのために、158%増加した。現在、メタン排出の60%は人間活動によるもので、40%は湿地などの自然の排出源から出ている。1999年から2006年まで、大気中メタン濃度は一時的に比較的安定していたが、その後再び増加している。その理由は、永久凍土の溶解や熱帯湿地からの排出の増加を含め、現在研究中という。

 次いで温暖化への寄与が大きい酸化窒素は、海洋、バイオマス燃焼、肥料の使用、様々な工業的プロセスなど、自然と人工の排出源から大気中に排出される。2010年における大気中濃度は産業革命以前より20%い323.2ppbとなっている。これは、過去10年、年平均0.75ppbの率で増えてきた。主に、グローバルな窒素循環に大きな影響を及ぼす(厩肥を含む)肥料を含む窒素の使用の結果である。その100年にわたる気候への影響は、等量の二酸化炭素排出の298倍になる。また、成層圏オゾン層破壊でも大きな役割を演じる。
 

 その他のGHGであるハロゲン炭素化合物については、フロンは国際的なオゾン層保護対策によって減少しているが、代替フロンは急速に増加している。それは強力な温暖化効果をもち、二酸化炭素よりはるかに長く大気中に残る。

 全体として、1990年と2010年の間に、放射強制力(気候システムへの温暖化効果)は29%増加した。

 ブルティンは、とりわけ二酸化炭素の298倍もの温室効果を持つ酸化窒素に着目、「農地に施用される肥料の量を作物の窒素要求に合わせて減らすことで酸化窒素排出を減らすことができる。そのような変化は、世界の食料安全保障をめぐる懸念を生み出す作物収量の低下を避けるように慎重に進めねばならない。北半球中緯度地域での肥料の使用が際立ち、そのために、二酸化窒素濃度は北から南に行くに連れてわずかながら下がっている」と強調する。日本を含む北半球温帯地域の施肥慣行が問われている。