農業情報研究所環境気候変動・災害・砂漠化・水問題等気候変動と農業・食料生産:2014年6月13日

農薬使用の増加が米国の大豆生産を気候変動から護る―米農務省農業研究局の研究

 気候変動、地球温暖化に伴う冬季の気温上昇で昆虫(害虫)・雑草・真菌病が増加、米国の大豆生産地帯の大豆生産を維持するために農薬施用が増えることになるだろう。そのように結論する米国農務省(USDA)農業研究局(ARS)の研究成果が科学誌・PLOS ONEに発表された。

 Increasing Minimum Daily Temperatures Are Associated with Enhanced Pesticide Use in Cultivated Soybean along a Latitudinal Gradient in the Mid-Western United States,Plos One,14.6.11
 http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0098516

 温帯地域における農業有害生物の分布と生残は冬季の低温で食い止められる。ARSのCrop Systems and Global Change Laboratory研究者・ Lewis H. Ziskaは、ミネソタからルイジアナに至る南北に1300マイルにわたって伸びる地域における大豆商業栽培での1999年以来の農薬施用量を調査した。この研究対象地域における日最低気温には、緯度により華氏マイナス20度から23度の大きな幅があるが、単位面積当たりの大豆収量は州によって変わらない。しかし、農薬総施用量については冬季最低気温の増加と正の相関関係があった。最低気温上昇が農薬使用増加の要因であることを示唆している。

 1977年から2013年まで、冬季最低気温はどの緯度でも増加しているが、増加率はルイジアナのような南部よりもミネソタのような北部の州で大きかった(これは、緯度が高いほど温暖化が進むという気候変動政府間パネルの予測とも一致する)。このような新知見からして、Ziskaは、この気温のトレンドが続くとすれば、今後10年の地域ごとの大豆農薬使用についても、北部の除草剤使用増加、南部でのは殺虫剤・殺菌剤使用増加を伴う今迄と同様な変化が続くと結論する。

 総じて、農薬施用を増やすことが、日最低気温上昇と気候変動に関連した有害生物増加に対応して大豆生産を維持する手段になるだろうという。 


 過去の傾向をそのまま延長して片付く問題とは思えないし、農薬使用増加で収量が本当に維持できるかどうかも不透明だが、USDAが温暖化への具体的対応策を真剣に考えている一つの証拠にはなるだろうか。