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2018年11月24日
気候変動はアメリカ人の健康・安全、生活、経済成長に甚大な影響 米国気候変動アセス最新報告
22日(水曜日)、米国北東部が異例の寒波に見舞われた。トランプ大統領は、早速、何が地球温暖化だとつぶやいた(Brutal
and Extended Cold Blast could shatter ALL RECORDS — Whatever happened to Global Warming?)。その二日後、温室効果ガスの排出が今世紀末まで過去のトレンドで増え続けるならば、アメリカは世紀末までGDPの2.5%に相当する巨額の気候変動のコストを支払うことになり、毎年何千人の死を見ることにもなる警告する、NASA、国防省、エネルギー省等連邦13機関の科学者の手になる米国気候変動アセスメント(National
Climate Assessment)の最新報告*が発表された。
このアセスメントは4年ごとの報告が法律で義務づけられたものだ。ただし、この報告が連邦政府の行動につながることはありそうにない。トランプ大統領は昨年、気候変動への国の備えを助けることを意図した政府諮問委員会は解体している。**
以下、報告の概要を記しておく。
気候変動は、既に脆弱なアメリカ中のコミュニティに新たなリスクをもたらし、人々の健康と安全、生活の質と経済成長率を脅かす。インフラと財産の喪失は、今世中にわたって経済成長を妨げる。我々が個々に依存し・相互に関連し合っている自然・人工・社会システムに影響を及ぼす。
コミュニティ、政府、ビジネスの気候変動緩和と適合の努力は始まっているが、経済・環境・人の健康の重大な損害を回避するのに必要なスケールに達する道は未だ遠い。
人々とエコシステムが利用できる水の質と量も影響を受け、農業、エネルギー生産、工業、レクリエーション、環境のリスクとコストが増している。
極端な気候事象、大気質、昆虫や害虫、食品、水を通しての病気の伝達がアメリカ人の健康と福祉をますます脅かすようになる。
相互に関連した社会的・物理的・生態系システムのかく乱で先住民コミュニティの生計・経済・健康・文化的アイデンテティが脅かされる。
珊瑚礁や海氷などのエコシステムとそれが提供する便益も変わりつつある。この影響も続くだろう。
気温上昇、酷暑、干ばつ、野火、豪雨で農業生産性は低下、家畜の健康、作物の収量と質の低下、米国内外の極端な事象が農村の生計、食料安全保障、価格安定を脅かす。
豪雨、沿岸洪水、熱暑、野火、その他の極端な事象は古びたインフラにさらにストレスをかけ、経済、国家安全保障、必需サービス、健康、福祉を脅かす。
沿岸のコミュニティとエコシステムへの影響も増す。多くのコミュニティが高潮洪水や資産価値減少で財政的影響を蒙る。
自然環境が提供する便益に依存するアウトドア・レクレーション、環境経済、生活の質が劣化する。
:*CLIMATE
ASSESSMENTVolume II: Impacts, Risks, and Adaptation in the United States
**(US
government disbands climate-science advisory committee,nature.com17.8.20)
関連ニュース
U.S. Climate Report Warns of Damaged Environment and Shrinking Economy,The
New York Times,18.11.24
Le réchauffement climatique menace
l’économie américaine et mondiale,Le
Monde,18.11.24
Fire, drought, flood: Climate challenges laid bare in US government report,nature.com,18.11.23
Climate change 'will inflict substantial damages on US lives',The
Guardian,18.11.23
Climate change could cost US billions, report finds,FT.com,18.11.23 |