農業情報研究所環境気候変動ニュース 2019916 

世界食肉消費がピークに 健康と気候への影響を減らす 日本はここでも化石賞?

 フィナンシャルタイムズ紙が世界の食肉消費はピークに達したのではないかと報じている。

Have we reached ‘peak meat’?,FT.com,1912.27

FT BIG READ.FOOD Have  we  reached peak meat?Financial Times,19.12.28,p.5

 記事によれば、Josef SchmidhuberFAO貿易市場副部長はOECD-FAOのデータに基づき、「OECD地域の(食肉消費の伸び率は)相当減っている。食肉消費がピークに近づいている国もある」。「インドやラテン・アメリカでも急速な伸びは予想されない。アフリカでも思っていたほど伸びていない。鶏肉消費さえ、将来の成長は過去を下回る」と言う。

 米国の一人当たり消費はなお世界一だが、2020年の100キログラムで頭打ちになると予想される。昨年71キログラムに達したEUも同様だ。

 こうした動きは、大部分、食肉の過剰摂取が癌や心臓病に結びつくという研究がもたらしたものだが、最近スポットライトを浴びるようになった家畜飼養の気候変動への影響への懸念がこれに拍車をかけた。国連気候変動政府間パネルの最新報告は、家畜が排出するメタンなど温室効果ガスは温室効果ガス全排出量の10%ほどを占めると言う。

 企業もこれに対応せざるをえなくなっている。食品企業やレストランは新たな肉抜き食品を提供、タイソンフーズのような食肉加工企業やネスレなどは自前の代替タンパク質を導入、バーガーキングは植物ベースのワッパーを提供し、マクドナルドもヴィーガンバーガーをメニューに加えようとしている。

 ところで、日本はどうなっているのだろう。健康や気候変動を気にして牛肉や豚肉を食べるのを減らしたとか、やめたとか、聞いたことがない。レストランやファーストフード店も、スーパーの食品売り場も、以前と変わるところがない。輸入肉全盛だ。

OECDのデータを見ても、食肉消費がピークを迎える気配はない。消費量は欧米に比べてずっと少ないが、それは言い訳にならない。炭素排出量は世界の1.3%に過ぎないと石炭発電を擁護し、豊かな国がこれではグローバルな対応を要する気候変動には対処できないと批判を浴びたオーストラリア(首相)と同じことだ(化石賞オーストラリア  “豊かな国”としての責任を負え さもないと・・・ 時評日日 19.2.25)。

 どうやら日本、食肉消費でも化石賞受賞となりそうだ。