農業情報研究所


米国研究グループ、除草剤アトラジンの環境ホルモン作用を確認

農業情報研究所(WAPIC)

02.4.17 

 カリフォルニア大学の研究グループにより、除草剤アトラジンが通常の環境に存在するような微量であってもカエルの雌雄同体化現象と雄性喪失を招くことが確認され、その研究結果が16日付けの米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences )に発表された。

 グループは、アフリカツメガエルの幼生(オタマジャクシ)を0.01ppb(1ppbは10億分の1)から200ppbのアトラジンに曝して生殖巣の組織構造と喉頭部の変形を追跡したが、0.1ppb以上のアトラジンが雌雄同体化を招き、1.0ppb以上で雄の喉頭の雄性が失われた。さらに、性的に成熟した雄の血漿のテストステロン(精巣から分泌される雄性ホルモン)のレベルを調べたところ、25ppbで10分の1に減少した。この現象は、アトラジンがエストロゲン合成酵素を誘導し、テストステロンをエストロゲンに変えるという仮説によりこれが説明されるとしている。

 グループによれば、アトラジンは米国を始め、世界中で広く使われており、農地から流れ出る流水に数ppbが含まれうるし、降水中では40ppmに達する可能性がある。従って、この研究は、その他の両生類にも回復不能な雌化の危険を示唆し、他のホルモン撹乱物質(環境ホルモン)と相俟って、世界的な両生類減少の要因になるかもしれないという。

 アトラジンは、日本でも多くの河川で検出されている。フランスは、昨年、2002年9月30日からアトラジンの販売を禁止、2003年6月30日以後は、最終使用者による使用も禁止するという決定を行なった(フランス:除草剤・アトラジンを禁止へ,農業情報研究所、01.10.1)。

 Tyrone B.Hayes et al,Hermaphroditic,demasculinized frogs after exposure to the herbicide atrazine bat low ecologically relevant doses,Proc.Nat.Acad.Scu,99-8,5476-5480(2002)

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 Weed Killer Deforms Sex Organs in Frogs, Study Finds,The New York Times,4.17

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