農業情報研究所環境環境・自然保護・生物多様性2019年2月12

  世界の昆虫種の40%が絶滅の恐れ 食料生産に影響、害虫増加の恐れも

昆虫の数に関する過去13年間の73の研究(注)が示唆するところによると、世界の昆虫種のおよそ40%が今後数十年の間に絶滅する恐れがある。陸生ではチョウ目、ハチ目、糞虫(甲虫目)の減少が最も著しく、トンボ目、カワゲラ目、カゲロウ目の水生昆虫は既に相当の種が絶滅している。

減少しているのは特定の生態環境に適応した種(スペシャリスト)だけではなく、広範な環境に対応できる種(ジェネラリスト)も同様に減少している。他方、少数の種は増加しつつある。減少した種が消えた隙間を占拠しつつあるジェネラリストである。とりわけ水生昆虫では、広範な生息環境・食餌、農業・都市による汚染水にも耐える種が失われた種に置き換わりつつある。

種を減少させている主な要因は①生息地(ハビタット)の喪失と集約農業への転換および都市化、②主に合成殺虫剤と肥料による汚染、③病原体や導入種などの生物学的要因、④気候変動―これは特に熱帯地域で重大な影響―である。

昆虫は鳥や小哺乳動物餌となるだけなく、75%の世界の作物(さくもつ、サクブツではありません)受粉を助け、土壌養分を補充し、害虫の数を抑える。他方、人工的環境に耐えるハエやゴキブリのようなジェネラリストの増加は人間の健康にも悪影響を与える。

研究者は、現在の農業慣行の再考、特に農薬使用の削減とエコロジーに基づく持続可能な慣行への移行が緊要と言う。加えて、農業・都市環境における汚染水浄化のために、有効な修復技術が適用されねばならないと言う。

注)Worldwide decline of the entomofauna: A review of its drivers,Biological Conservation,April 2019

関連ニュース:Global insect decline may see 'plague of pests',BBC,19.2.11Les insectes pourraient disparaître de la planète d’ici 100 ans,Le Monde,19.2.11

*ポリネーター(授粉動物)の減少については、北林寿信 「ハチ(ポリネーター)とネオニコチノイド」 科学(岩波書店) 201711月号 pp.985-988を参照されたし。