農業情報研究所>環境>エネルギー>ドキュメント:2016年11月26日
バイオエネルギー黒書 国際NGOがEUのバイオエネルギー政策を告発する報告書
国際環境NGO
●スロバキア― 燃焼される木材は東部スロバキアの保護林からのものを含め、2005年以来130万トン増加した。
バイオエネルギーはスロバキアの再生可能エネルギーの最大の供給源である。バイオエネルギーの成長は2020年に14%という再生可エネルギー目標に牽引され、エネルギー生産者に対する電力価格保証や林業に対するEU資金による支援により支えられている。エネルギー用木材使用は過去9年に72%増加した。これは、大部分の場合、産業レベルの大規模エネルギー生産のためである。とりわけ東部のPresovaky地域やKosicky地域では、エネルギー用木材消費は加工や景観管理から出る廃材のような持続可能な供給源から供給できる量を既に超えている。Ploniny国立公園のような保護地域から木材までが使われている。
●イタリア
北イタリアでは、バイオエネルギー需要は、多くは公有のこれまで手つかずだった河川沿岸林の伐採につながった。企業は、その活動を“洪水調整”措置と偽り、当局の伐採許可を得ている。実際には、気候変動や都市の河川スプロールなどと相俟って、最近の洪水被害の増加を招いている。
●ドイツ
ヨーロッパのバイオガスのために使用される原料の半分は食用作物(大部分はトウモロコシ)である。バイオ燃料のために農地や食料を使用することの否定的影響は広く認められているが、これはバイオガス(熱、電気)についても同様である。ドイツでは、バイオガス生産は、特に耕地の65‐75%がトウモロコシで埋められるLower
Saxonyに集中している。バイオガスのために大量のトウモロコシを使うために、地域はトウモロコシを輸入に頼らねばならなくなった。
Lower
Saxonyは泥炭地、湿地、自然草地にも恵まれているが、それもバイオエネルギー需要の増大で脅かされている。2014年の法律改正で有害な影響は多少緩和されたが、何千ものバイオガスプラントはなおトウモロコシに頼っており、他国もドイツに追随している。
●フィンランド
伝統的に林産業副産物(バーク等)が利用されてきたが、バイオエネルギー需要の増大で材木、枯れ木、切株(土壌保全に悪影響)など持続可能性の観点から問題の多い原料が使われるようになった。小径木の使用は紙・パルプ産業と競合、 伐採と間伐の増加につながっている。枯れ木を含めた低級木の利用も森林生物多様性の損失を招く。
●コロンビア
世界第4位のパームオイル生産者も、今やヨーロッパのバイオディーゼル市場に突進している。これは気候変動に関して最悪のタイプのバイオ燃料だ。そのヨーロッパへの輸出は、ドイツ、スペインを中心に、2013年から2015年にかけて3倍に増えた。そのために、コロンビアのパームオイル・プランテーションはこの10年で倍増、いまでは50万㌶に達している。これは人々と自然に多大な犠牲を強いる。多くの熱帯雨林農地がアグリビジネス大企業の手に渡った。この種のバイオ燃料を制限するEUの政策も、ヨーロッパのバイオ燃料用パームオイルの輸入を減らすには弱すぎる。
●フランス、スペイン、ロシア
ドイツのエネルギー巨大企業・Uniperは南フランス・Gardanneの古い石炭発電所の一部を木材発電所に転換した。それは年85万トンの木材を燃やす。その半分以上は輸入木材になるだろう。
スペインのバイオエネルギー企業・ENCEはGran Canariaに木材チップ年56万トンを燃やす70メガワットの発電所を建設すると発表した。しかし、地域で調達できる森林残滓は必要量の20%にすぎない。
ヨーロッパは毎年800万トンの木材ペレットを輸入しているが、そのうち100万トンはロシアからのものだ。100万トンの生産能力を持つ北西ロシアの一企業が生産する大量のペレットがヨーロッパに売られる。その78%はデンマーク、イタリア、フィンランド、スウェーデン向けだ。ペレットの主要原料はレニングラード近くの森林から採るラウンドウッドやホールトリー、伐採の増加と生物多様性の損失をもたらしている。
ビデオ・Bioenergy: the big carbon con of our time? on YouTube も見ることができるそうである。