農業情報研究所環境エネルギーニュース:2015年8 月30日

 喜んでばかりはいられない太陽光発電急成長 奪われる生物多様性

 今朝の東京新聞、「今夏に電力需要がピークを迎えた時間帯にどう電力が確保されたか電力各社に取材したところ、太陽光発電が原発十二基分に当たる計一千万キロワット超の電力を生み出し、供給を支えていたことが分かった。二年前は供給力の1%にすぎなかった太陽光は、6%台に急伸。九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)が今月再稼働するまで約一年十一カ月にわたり国内の「原発ゼロ」が続いた間に、太陽光が欠かせない電源に成長したことが明確になった」と伝えている。 

 太陽光発電 今夏シェア6%台に ピーク時に原発12基分  東京新聞 15.8.30 朝刊 1面

 太陽光発電割急成長 割高な石油火力抑制 不安定さ課題 電力融通広域化 東京新聞 15.8.30 朝刊 2面  

 なお課題はあるとしても、「原発ゼロ」でもやっていける希望が持てるというのはに喜ばしいことだ。ただ、この記事を見て、ただちに以前から抱いている懸念がまた頭をもたげた。

 太陽光発電といえば思い浮かぶのは、以前はビルの屋上や壁、普通の民家の屋根に張られた太陽光パネルだった。ところが、最近見かけるのは、広大な地面をじかに一面に覆うパネルである。この東京新聞の記事にも、広大な地面をじかに覆う群馬県中之条町「沢渡温泉第1太陽光発電所」の写真が掲げられている。下の写真は、筆者が浜松近傍でたまたま見かけた光景だ。

 農地や林地はもちろん、経済的はほとんど無価値に見える荒蕪地・原野といえども、降り注ぐ太陽光が豊かな生態系・生物多様性を育んでいたはずだ。太陽光パネルはそういう生態系を破壊し・生物多様性を奪う。太陽光発電所の設置には環境アセスメントが不可欠だ。例えば上掲の写真のような土地、温室効果ガス削減の観点からすれば緑地空間に変える方がずっと有効ではないか。というより、砂漠以上に生気が感じられないこの荒涼たる風景に接すると、数では表せない大事なものを失っているとも感じる。ともあれ、喜んでばかりはいられないと注意を促したい。