フォード会長が燃料税引き上げを支持、ハイブリッド車促進策と引き換え

農業情報研究所(WAPIC)

04.4.9

 米国第二の自動車メーカー・フォードのビル・フォード会長兼経営最高責任者が、エネルギー効率的な車の促進に対するインセンティブと引き換えに燃料税引き上げを支持すると発言した。8日付フィナンシャル・タイムズ紙がトップ記事でそう伝えている(Ford backs higher fuel taxes,Financial Times,4.8,p.1)。水より安いと言われるガソリン価格は、車なしでは何一つできない現代アメリカ人の生活の枢要な基盤をなしている。これに挑む政府は転覆を覚悟しなければならないだろう。あえてこの難題に挑もうというのである。今月の米国の石油価格は記録的高さに達し、大統領選挙での微妙な問題になったが、フォードの見解は論争をさらに燃え立たせるだろうと同紙は言う。

 彼は、ニューヨーク・モーター・ショーで、「燃料税と[燃費節約的なハイブリッド車のための]インセンティブの何らかの組み合わせを支持する」、「本当に安い燃料価格が長年続くと期待するのは非現実的と考える」と語ったという。

 トヨタがプリウス・モデルを発表して以来、米国ではハイブリッド車への人気が高まっている。しかし、強力なスポーツタイプ車やトラックに人気が集り、一般的には燃料効率は低下している。フォードは7日、低速走行での燃料効率を上げるためにバッテリーを利用するハイブリッド石油エンジンをもつオフロード車・エスケープの新しいバージョンを発表した。初年度に2万台の販売を予想している。ニューヨークでのテストで、1回の給油で576マイル(約1,070km)、1ガロン当たり38マイル(1リットル当たり16km)走る能力を実証した。さらに大型車を含むすべての車種で効率改善に努めるという。

 これは環境に目覚めた少数の消費者を狙ったものではないかと言う懐疑論者に怒り、ハイブリッドは大衆市場製品だと主張した。「この国の問題は、社会が望むものと顧客が望むものとの間に大きなズレがあることで、これは極端に安い燃料価格が引き起こすと考える」と米国社会の根本問題に触れた。

 同社は先週、ホワイトハウスと共和党に対する上級アドバイザー二人(一人は現ブッシュ政府の前エネルギー長官補)を雇って政府への働きかけを強めた。だが、他社が追随する動きはない。ジェネラル・モーターズは、2010年までに補助金なしで販売できる燃料電池車を生産しようとしている。補助金は長くは続けられないと言う。フォードの意見が通る見通しはないが、これをめぐる論争が沸き立つだけでも、大きな変化だろう。

 農業情報研究所(WAPIC)

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