ススキがヨーロッパの生産的エネルギー作物に 温暖化抑制に大きく貢献の可能性

農業情報研究所(WAPIC)

05.9.7

 BBC Newsによると、4mにもなるススキ科の草(Miscanthus)が地球温暖化の軽減に大きな役割を演じることになるかもしれない。最近の研究は、これが発電所で燃やされる生産的なエネルギー作物になることを示唆している。育種計画はその経済性を一層改善するだろう。ヨーロッパ農民は、高収量を得るために肥料をほとんど必要としないこの巨大な草の栽培を間もなく始めることになろうという。

 Tall grasses set to power Europe,BBC News,9.7
 http://news.bbc.co.uk/2/low/science/nature/4220790.stm

 ダブリンで開かれた会合(→CO2レベル上昇で収量は増えない 今後50年の気候変動で飢餓人口が5千万人増加,05.9.7)で、植物と気候に関するアイルランドの専門家・マイク・ジョーンズは、「ヨーロッパ[15ヵ国]の敵地の10%でこれを栽培すれば、電力総生産の9%を生産できる」と語ったという。

 イリノイ大学のスティーブ・ロング教授は、バイオマスの燃焼の大気中二酸化炭素への純影響はゼロと強調する。彼は、イリノイの地所で二つのMiscanthusのハイブリッド種を栽培してきた。このプロジェクトはヘクタール当たり60トンの乾物収量を達成した。典型的収量がヘクタール当たり12トンほどのヨーロッパで行われてきた試験の成績を大きく上回る。それでも、これは36バレルの原油に等しいエネルギーを提供する。現在の1バレル当たりの価格は60ドルほどだから、この収量でもヘクタール当たり2,160ドル[約24万円]ほどの潜在価値があるという。

 教授によると、バイオマス作物は二酸化炭素増加の抑制にはほんの僅かな貢献をするだけと見られたきたが、実際の寄与は大きくなりうるし、そのために巨大な技術的難関突破が必要なわけでもない。農民はますますこのアイデアに惹きつけられるようになっている。その魅力の一つは、機械が食料作物のために使われていないときが収穫期になることだ。英国はこれを非常に真剣に受け止めている。環境食料農村省(DEFRA)が大規模育種計画に資金を供給している。一農業者協同組合も、今後3年間に1万haでの栽培を計画しているという。