スイス緑の党 バイオ燃料輸入停止を主張 バイオ燃料エコ・バランス研究を受けて

農業情報研究所(WAPIC)

07.6.7

  スイス緑の党がバイオ燃料輸入のモラトリアムを主張している。記者会見で、新興国におけるこのような燃料の生産がエコロジー的、社会的災厄を引き起こしていると理由を説明した。これは、特にブラジル、インドネシア、インドのような新興国に関係する。国際市場におけるバイオ燃料需要の爆発的増加に応じるために、巨大な面積の熱帯林が破壊されているという。

 これは、とりわけ、5月22日に発表されたスイス連邦理工科学校付属研究所・Empaの研究に触発されたもののようだが、公党がバイオ燃料輸入モラトリアムの主張を公にしたのは世界で初めてのことかもしれない。世界の諸政党、政治家はこれをどう受け止めるのだろうか。

 Biocarburants: les Verts pour un moratoire sur les importations,edicom,6.5
 http://www.edicom.ch/fr/news/suisse/1189_3887960.html

 Empaの研究自体は、エネルギー、環境、農業の三つの連邦局の委嘱によるもので、バイオエタノール、バイオメタノール、バイオジーゼル、バイオメタンの4種のバイオ燃料のエコロジー的バランス(エコ・バランス)を研究した。スイス同様、必ずしも現在主流のバイオ燃料原料資源に恵まれないわが国のバイオ燃料政策の構想に当たっても参考になるだろうから、その主要な結論を紹介しておく。

 «Biofuel» does not necessarily mean ecologically friendly,Empa,5.22
 http://www.empa.ch/plugin/template/empa/3/60542/---/l=2

 ・すべてのバイオ燃料が生物的に優しいわけではない。原則として、検討されたバイオ燃料の各々は環境的に受け容れ可能なように生産することはできる。しかし、原料と燃料への転換の違いで、トータルなエコロジー的観点からしてどの代替燃料がガソリンやジーゼルより優れているかが決まる。スイスへの外国からの輸送も含むバイオ燃料の輸送の環境影響は小さい。従って、ジーゼルやガソリンよりも課税を減らすなどのバイオ燃料支援策は、このような違いに応じたものでなければならない。

 最近の国連報告(国連バイオエネルギー影響評価報告 バイオ燃料産業急拡大に警告,07.5.10)も同様な結論に達している。それは、バイオ燃料分野における開発と技術の促進に関する政治的決定がなされる前に、経済・環境・社会への影響が注意深く分析されねばならいと強調している。

 ・バイオ燃料のトータルなエコ・バランスは、原料の農業生産を通じてマイナスの影響を受ける。例えば、熱帯諸国では、火入れによる熱帯雨林の開墾が二酸化炭素の大量の放出、すすや窒素酸化物・煙霧質・ダイオキシンなどなどの有害ガスの排出を通しての大気汚染の増加、生物多様性の喪失につながっている。温帯地域での原料栽培は、集約的な過剰施肥や土壌の機械的処理のために、環境に悪影響を与える。ヨーロッパでは、ライ麦からのエタノール生産で極度の環境損傷が起きている。そのエコ・バランスは、低収量のために、研究されたすべてのバイオ燃料のなかでも群を抜いて最悪だ。

 ・エコ・バランスの観点からすると、ゴミ、廃棄物からのエネルギー回収が化石燃料に比べて最も優れている。原料供給が生み出す環境影響が排除されるだけでなく、ゴミ処理からの汚染物質排出も減らせる。同様に、木材やそのガス化の利用からも良好な結果が得られる。原料獲得の環境影響が最小限に抑えられるからだ。

 さらに、検討されたすべてのバイオ燃料の環境影響は、化石燃料とは対照的に、特別の措置を講じることで大きく減らすことができる。バイオ燃料の謹厳な認証ガイドラインで、火入れによる熱帯雨林破壊を減らすことができる。Empaの科学者は、近い将来、このような燃料の既存の、また新たな開発される製造過程の最適化を通して、個別のバイオ燃料の評価を改善することができると期待する。

 ・国内で生産されるエネルギーの量は限られている。利用可能なバイオマスが効率的に、また環境に優しい方法でバイオ燃料に転換できるとき、そして同時にエネルギー効率が増すときに、これらエネルギーがわが国の将来のエネルギー供給において重要な役割を演じることができる。

 関連情報⇒http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/earth/energy/index.htm