ブラジル エタノール産業が雇用改善ー大統領 労働条件は国内最悪ー労働省研究機関

農業情報研究所(WAPIC)

07.7.10

   7月5日、欧州議会に招かれたブラジル・ルラ大統領は、「バイオ燃料は気候変動との戦いに関しては大いなる希望をもたらすけれども、特に栄養不良がなお問題になるブラジルでは、食料生産と競合する。ブラジルはこれら二つの競合する要因のバランスをどう取ることができるのか」という欧州議会議長の質問に対し、

 飢餓は所得分配[貧困]の問題で、世界の食料生産は世界人口を養って余りある、ブラジルの経験はバイオ燃料が貧困との戦いに貢献することを示している、「エタノール生産は、平均賃金以上の100万の直接、間接の雇用を生み出している」と答えた。

 European Parliament:Brazil's President Lula on trade, agriculture, poverty and biofuels,07.7.6

 ちょうどそのとき、本国では、ブラジル労働省管轄の国立保健安全問題研究機関・フンダセントロ(Fundacentro)のチェアマン・Remigio Todeschini が、Efeのインタビューに答え、ブラジルの砂糖・エタノール産業の労働条件は”救いがないほどにひどい”(abysmal.)、「この部門の労働条件は、ブラジルに存在する労働条件の中で最悪だ」と述べていた。

 Brazil Biofuels Sector Has Some of Worst Working Conditions in Country, Government Says; 1000 'Slave Workers' Freed,soyatech.com,7.9

 この報道によると、労働省はサトウキビ・プランテーションやエタノール生産施設の検査を増やしてきた。今週は、連邦警察と労働省検査官により、操業中のサトウキビ・プランテーションから1000人の”奴隷労働者”が解放された(⇒ブラジル・アマゾンのサトウキビ農園 警察の手入れで1000人の”奴隷”労働者解放,07.7.4

 Todeschini は、外国投資を歓迎するし、バイオ燃料も支持するが、産業の成長は安全な労働を伴わねばならないと警告する。
フンダセントロは、労働条件の最低基準の設定、監督の強化、一日6時間労働の推進を望むという。

 フンダセントロは、産業における死亡事故が2002年の77件から2005年には84件に増えていることを発見した。Todeschini は、死亡事故が年々増えているのが問題だと言う。この数には、最近の収穫期にサトウキビ畑で死んだ12人のサトウキビ刈り取り労働者のような従業員名簿にない者の死は含まれていない。

 サン・パウロの25万から40万の刈り取り労働者が、1労働日あたり6ドルを稼ぐために、一日最低12トンー一秒に一ナタのペースーを刈り取り、束ねねばならない。その大多数は組合や適切な住居を持たず、栄養不良、暑熱、化学農薬・ほこり・すすに悩まされている。Todeschini は、「これは産業のすべてに共通だ」、例外はないと言う。

 しかし、先週開かれたこのような労働条件の問題を審議する上院バイオ燃料小委員会で、右派議員は産業に専横に対していると労働省を非難、検査を増やすことを拒絶する企業が取る立場を正当化したという。