OECDの研究 バイオ燃料補助金廃止を求める 温室効果ガス削減には非効率、生態系損傷も

農業情報研究所(WAPIC)

07.9.11

  フィナンシャル・タイムズ紙によると、OECDが今日、代替エネルギー源の支持への現在の突進は食料価格の高騰と自然ハビタットの破壊につながると、バイオ燃料補助金を廃止すべきだと諸国政府に警告する。

 OECD slams biofuels subsidies for sparking food price inflation,FT.com,9.11

 OECDは今日と明日、パリで、米国を含む12の国の政府の代表による持続可能な発展に関するラウンドテーブルを開く。そのために準備された研究報告によると、現在のバイオ燃料利用拡大の推進は有意味な環境便益を生み出すことなく市場を混乱させる持続不能な緊張を生み出している。

 バイオ燃料は[温室効果ガスの]エネルギー関連排出を、最大で3%減らすだろう。この便益は、納税者の負担となる巨大なコストを払って生まれる。米国だけでも、エタノール製造のために年に70億ドルを支出していると推定され、排出される二酸化炭素を1トン減らすために500ドル以上を払っていることになる。EUの場合にはその10倍にもなるだろう。

 バイオ燃料は何らかの環境損傷にもつながる。「環境価値が適切な市場価格に反映されないかぎりで、森林、湿地、草地などの生態系がバイオ燃料作物に取って代えられる強力な誘因がある」と言う。

 報告は、政府はバイオ燃料補助金を段階的に廃止し、市場が温室効果ガス削減の最も効率的な方法を見出すことを可能にする”技術中立的”炭素税を利用することを勧告している。

 なお、この研究報告の全文は、OECDのウエブサイトで見ることができる。それによると、これはラウンド・テーブル議長の責任で準備されたもので、ここで表明された意見や使われた論拠は、必ずしもOECDまたはその加盟国政府の公式見解を反映するものではないという。

 http://www.oecd.org/dataoecd/33/41/39276978.pdf

 ただ、国連報告(国連バイオエネルギー影響評価報告 バイオ燃料産業急拡大に警告,07.5.10)に続き、多大な影響力を持つ国際機関・OECDからもこのような文書が出ること自体、現在のバイオ燃料ブームが持続可能な発展の重大な障害となってきたという認識の広がりと深まりを示している。バイオ燃料への狂奔はエネルギー安全保障や温暖化抑制にはほとんど貢献することがないうえに、生態系を壊し、持続不能な食料生産・供給システムをさらに拡張するだけに終わる可能性が高いと 考える筆者(「バイオ燃料は現代の”黄金”か」 『世界』07年10月号) も、このような認識を共有する。

  ところが、日本政府は、国内助成どころか、原料調達のための東南アジア植民まで支援するのだという。食料に事欠く人々からの食料生産用地の取り上げ、泥炭湿地・森林破壊の加速に手を貸す無神経さだ(バイオ燃料用の農産物生産支援、東南アジアに技術指導へ,YOMIURI ONLINE,9.11)。