ADM社 エタノール価格低下と原料価格上昇でコーン加工副産物部門利益が半減

農業情報研究所(WAPIC)

07.11.7

 米国バイオエタノール産業の先駆者であり、現在もトップ生産者の一つをなす穀物メジャー:アーチャー・ダニエルズ・ミドランド(ADM)社が11月6日、第一クォーターリポートを発表した。

 ADM Reports 1Q Results,07.11.6

 エタノールの販売価格・販売量の低下とトウモロコシ(コーン)価格高騰のために、トウモロコシ加工事業中の副産物部門にかかわる営業利益は、昨年同期の1億7000万ドルからほぼ半分の8900万ドルにまで落ち込んだという。先のヴェラサン社の工場建設中止(米国最大級のバイオエタノール生産者 エタノール価格急落で新工場建設を停止,07.10.3)に続くこのニュースは、劇的な急拡大を続けてきた米国エタノール産業の暗い将来を予感させる。

  フィナンシャル・タイムズの報道によると、ADMのパトリシア・ウォルツCEO(最高経営責任者)は6日、議会と州政府が速やかに産業支持に動かなければ、バイオ燃料部門の未来が脅かされると警告した。

 ブッシュ大統領は年頭教書で、今後10年で自動車燃料用ガソリンの20%をバイオ燃料に置き換える[そのためにはバイオ燃料の生産=利用を現在の6倍に増やさねばならない]とぶち上げた。しかし、2007年エネルギー法案は上・下院案のすり合わせが難航、今のところ何の法的裏づけもない。それでは莫大な投資のリスクが大きすぎる。 

 フロリダ、ジョージア、ノースカロライナなどの州は、エタノール利用の拡大に不可欠なインフラの整備やガソリン添加物・MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)のエタノールへの切り替えにも積極的に動こうとしない。これもエタノール産業の成長を遅らせている。

 彼女は、トウモロコシ原料エタノールを放棄することになれば、食用作物以外の植物繊維に由来するセルロース系エタノールのような第二、第三世代バイオ燃料には決して進めないと警告したそうである。

 ADM urges progress on fuel bill,FT.com,11.6

 確かに、現在のエタノールで立ち行かないのに、次世代燃料で立ち行くはずがない。その開発資金の捻出さえ難しいだろう。