ナミビアでヤトロファ・プランテーション計画 食料に影響なしというが農民のリスクは?

農業情報研究所(WAPIC)

07.12.10

  ナミビア企業・Prime Investment Ltdが、バイオディーゼル原料油を採取するためのヤトロファのプランテーションを、北部・カバンゴに造成することを提案している。ヤトロファは、干ばつに強く、荒地でも育ち、食料供給にも影響を与えないからと、その栽培が世界中でブームを迎えている植物である。会社はその環境影響アセスメント(EIA)で、それが食料生産を破滅させるという誤解を一掃したという。

  このEIAによると、カバンゴの大部分の家庭は、作物生産で十分な食料を得ることができず、既に大部分の食料を現金収入からの購入に頼ってきた。従って、換金作物、すなわちバイオディーゼル原料用ヤトロファが食料作物にとって代わり、食料自給を減らす恐れはない。

 その計画では、75%が遊休地、または放棄地となってきた6万5000fの土地を利用する。従って、75%は、食料生産への影響なしにヤトロファを栽培できるという。

 Namibia: Energy Crops Could Jeopardise Food,New Era via allAfrica.com,12.6
  http://allafrica.com/stories/200712060544.html

 ただし、それで十分な、あるいは安定した現金収入が得られるどうかは別問題だ。半乾燥熱帯地域作物国際研究所(ICRISAT)所長であり、国連砂漠化防止条約科学技術委員会議長でもあるWilliam Dar博士は、乾燥地農民はバイオ燃料用に新規作物を栽培しているが、その作物化と収量・病害虫に関する研究がなお必要だと警告している。

 Research needed to cut risks to biofuel farmers,SciDev.net,12.6
 http://www.scidev.net/content/opinions/eng/research-needed-to-cut-risks-to-biofuel-farmers.cfm

 彼によると、バイオ燃料産業は規模の経済を要するために、通常は小農民を迂回しているが、ICRISATは、適切な作物の栽培を助けることで、貧しい農民をバイオ燃料革命に参画させようとしている。そうした作物の一つであるヤトロファは、プランテーションでのモノカルチャーでは病害虫の被害に会いやすいけれども、様々な食料作物の間に植える間作は、特にヤトロファが成熟し、バイオ燃料から最大限の収入が得られるようになるまで、食料作物の収穫によって農家の家計と経済持続性を助ける。

 とはいえ、その正確な経済的フィージビリティーの研究のためには、作物の潜在力をもっとよく見極める必要がある。

 ヤトロファの単位面積あたりの収量レベルに関するデータはほとんなく、育種計画もまったくない。ヤトロファは高度な花粉交雑作物で、植物体ごとに遺伝的に異なる。これは優れた植物の選抜育種の大きな可能性を与えるが、今までのところ、ヤトロファ種子の油含有量は25%から40%と大きな違いがある。それが遺伝的変異を反映しているのか、単に環境の違いを反映しているだけなのかも未解明だ。

 4年間を通しての種子平均収量にも18倍もの差がある。高収量のものは4年間固定しているから環境よりも遺伝が原因である可能性が示唆されるが、これについても、決定的には立証されていない。

 彼は、「バイオ燃料革命が継続し、ヤトロファは世界中で大規模に栽培されている。並行しての科学的研究の強化が、貧しい農民が経済的利益を刈り取りながら、無用なリスクに曝されないように保証しよう」と言う。これは、リスクに曝されないという保証は、今は未だないということでもある。

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