英国政府 バイオ燃料の間接影響見直しへ 2010年以後の政策形成で考慮

農業情報研究所(WAPIC)

08.2.22

  英国運輸省が21日、バイオ燃料生産の影響を見直すと発表した。

 同日、新たに設置された再生可能燃料庁(RFA:Renewable Fuels Agency)に様々な形態のバイオ燃料生産の経済・環境影響ー特に間接的影響ーの研究を先導するように要請した。研究結果は英国とEUのビオ燃料政策の開発に生かされる。

 ルース・ケリー運輸相は次のように言う。

 「バイオ燃料は、それが持続可能であれば、輸送の環境への影響を減らすのを助ける能力がある。そのために、4月に新たな再生可能輸送燃料義務(RTFO)を導入した。RTFOは、将来のバイオ燃料助成レベルの決定において考慮されるバイオ燃料の影響に関する多くのデータの収集を可能にする」。

 「しかし、将来のバイオ燃料[利用]目標は、バイオ燃料生産の環境影響に関する最新の科学的証拠も考慮に入れねばならない。最近は、余りに急速なバイオ燃料生産拡張に関連したリスクをめぐる多くの論争があり、今や世界中における農業生産の需要増大の間接的影響に関する証拠も現われている」。

 「英国政府は、この問題を非常に深刻に受けとめる。我々は、それが持続可能なようになされると確信できるまで、現在の英国の目標レベル[4月から輸送用燃料の2.5%]を超えて進む用意はない。今日発表する見直しは、バイオ燃料生産の全経済・環境影響が2010年から先の英国政策の形成において考慮されるように保証する」。

 「世界中における農業生産の需要増大の間接的影響に関する証拠」としては、「バイオ燃料生産の間接的影響が以前の炭素削減計算で必ずしも考慮されてこなかったことを示唆する最近数週間、数ヵ月の間に現われた多くの新たな研究論文(”米国のバイオ燃料作物用地の利用が土地利用の変化からの排出を通して温室効果ガス排出 (GHG)を増やす”というサイエンス誌の最近の論文[→バイオ燃料→土地利用変化で温暖化ガスが激増 森林等破壊防止規制も無効 新研究]を含む)」が挙げられている。

 Kelly announces review of indirect impacts of biofuel production,Department for Transport,08.2.21
 http://www.gnn.gov.uk/environment/fullDetail.asp?ReleaseID=354445&NewsAreaID=2&NavigatedFromDepartment=False

 欧州委員会は、2020年10%の目標を取り下げるべきという四方八方からの要求を拒絶、環境的持続可能性は”目標を満たすために計算に入れることができるバイオ燃料は化石燃料に比べてのGHG排出量が35%以上少なく、かつ原料は森林や湿地の開拓地から直接得たものではないとする」ことで確保しようとする「再生可能資源からのエネルギーの利用に関する」指令案(08年1月23日)*の第15条から第18条でお茶を濁そうとしている。

 この指令案の策定に当たっては、実に200を超える民間・公的機関、国際機関等からのコメントが寄せられている。例えば、国連6機関(UNEP、FAO、UNDP、UN-HABITAT、UNIDO、WHO)の共同コメント**は、食料価格への影響や土地利用変化のGHG漏出影響のような間接影響よりも、直接的な環境影響、社会的影響(多くのコメントの要請に反し、EUの持続可能性システムでは考慮外)の方が監視や取組が簡単だ、間接的影響を制御するための土地利用のコントロールを標的とする措置に取り組まねばならないとしていた。

 こうしたコメントは一切無視、直接的な環境影響、しかも温室効果ガス排出への直接影響だけを考慮して10%目標に突き進もうとしているのが今のEU政府である。

 英国政府が見直しを決めたことで、閣僚理事会と欧州議会における指令案審議は予想以上に難航する恐れが出てきた。

 *http://ec.europa.eu/energy/climate_actions/doc/2008_res_directive_en.pdf
 **http://ec.europa.eu/energy/res/consultation/doc/2007_06_04_biofuels/non_og/un_en.pdf