米国エタノール ”希望から籾殻に” 株価暴落でゲイツも一夏で37億円の大損

農業情報研究所(WAPIC)

08.10.23

  フィナンシャル・タイムズ紙が掲載した分析によると、ブームを謳歌してきた米国エタノールは、この3ヵ月の間に”希望から無用な籾殻に”化した。

 Kevin Allison and Stephanie Kirchgaessner,Analysis:From hope to husk,Financial Times,08.10.22,p.9
  Or
  Biofuels: From hope to husk,FT.com,10.21
  http://www.ft.com/cms/s/0/bec31b9c-9f9c-11dd-a3fa-000077b07658.html
  Also
  Ethanol boom dries up for investors,in US,Financial Times,08.10.22,p.1
  Or
  Investors suffer as US ethanol boom dries up,FT.com,10.21
  http://www.ft.com/cms/s/0/8531a8a2-9fa7-11dd-a3fa-000077b07658.html

 6月には1ガロン4ドルだったエタノール価格は、9月には1.7ドルにまで落ち込んだ(DTNによる)。エタノール工場の乱立による過剰生産が価格に圧力をかけた。他方で、原料トウモロコシの価格は、エタノール生産のための需要増大と石油コストの増大で上がり続けた。それによって、まさにこの3ヵ月の間に、エタノールはブームから籾殻に変わった。

 株式を公開する米国最大のエタノール生産6社の市場価値は、ピーク時の06年半ばに比べて87億ドル(約8,500億円)も減った。06年から株式を公開したAventine Renewable EnergyVeraSun Energyなどの株を購入し、保有していた投資家は、政府による巨額の産業支持(減税だけでも05年以来112億ドル)にもかかわらず、公募時価格の90%を失った。 

 マイクロソフト創業者のビル・ゲイツの私的投資会社・カスケードは、05年11月、パシフィック・エタノールの株の27%に8,400万ドルを支払った。しかし、工場が操業を始めた06年10月までにエタノール価格は急落、トウモロコシ価格は上昇した(参照:シカゴ商品取引所バイオエタノールとトウモロコシの先物相場の推移)。カスケードが投資を引き上げ始めた今年4月には、投資計画を発表したときには9ドル、ピーク時には42ドルだった株価は、4ドル以下になっていた。この夏、ゲイツは少なくとも3,790万ドルの損失を出したことになる。

 05年、06年のピーク時にエタノール産業に押しかけたその他の民間投資会社やヘッジファンドの成績はまちまちだ。モルガン・スタンレーなど、比較的早期に買い、売り抜けた者は大もうけしたが、ボストンの投資家グループ・Thomas H. Lee Partnersなどは逃げ遅れた。

 分析者によると、「エタノール産業が別の産業だったとしたら、今は死にかかっている。しかし、トウモロコシ畑を車の燃料に変える夢は死ぬのを拒否している」。


 もしもマケインが次期米国大統領となれば、米国エタノール産業は地獄に落ちるかもしれない。オバマが勝てば、「死ぬのを拒否」し続けるかもしれない。

 Political impetus puts plenty of mileage in corn-based ethanol,Financial Times,10.23
  Or
  Biofuel backers hold breath for US election,FT.com,10.23
  http://www.ft.com/cms/s/0/62568406-a088-11dd-80a0-000077b07658.html