EU、バイオ燃料の持続可能性確保で欧州議会案から大きく後退

農業情報研究所(WAPIC)

08.12.11

 12月9日、 EU再生可能エネルギー指令に関する欧州議会と加盟国(閣僚理事会)の間の調整が決着、欧州議会は輸送用バイオ燃料に関して大きく譲歩する結果となった(なお双方の全体会議での承認を残しており、これが最終決定ではない)。バイオ燃料の社会・経済・環境悪影響に対する懸念は取り除かれそうにない。気候変動を促進する恐れのあるバイオ燃料も大手を振ってまかり通りそうだ。

 MEPs and Council Presidency reach deal on renewables directive,European Parliament,12.10

 前に伝えたように、欧州議会は輸送用エネルギー最終消費の少なくも10%をバイオ燃料 とするという欧州委員会案の目標は支持しながらも、バイオ燃料のこのような大量生産の悪影響を減らすべく、この10%中の40%は、再生可能資源から生産される電気や水素エネルギー、廃棄物・リグノセルロース質バイオマスなどからの”第二世代バイオ燃料”でなければならないとしていた(欧州議会 EUの輸送用バイオ燃料利用目標切り下げ 持続可能性基準も強化へ,08.9.12)。

 ところが、暫定妥協案では、このようなグリーン電力や第二世代バイオ燃料の最低割り当ては廃止され、第二世代バイオ燃料は倍に評価するなどの多少の”ボーナス”を与えただけである。これらの代替エネルギーの実用化の可能性は極めて小さいから、実質的には同じことと言えなくもない。しかし、10%の目標をまったく見直すことなく第一世代バイオ燃料で目標達成に突っ走ることへの法的歯止めはなくなる。

 欧州議会は、バイオ燃料の持続可能性基準に関しても、温室効果ガス排出を化石燃料に比べて35%以上減らす(土地利用変化に伴う排出は考慮外)ものでばければならないという欧州委員会案を修正、45%以上でなければならず、2015年以後は60%以上でなくてはならないとしていた。これも妥協案では35%以上と欧州委員会案を踏襲、2017からは50%以上にすると大きく後退した。

 35%以上の削減ということでは現在主流のバイオ燃料のほとんどすべてが合格してしまう(欧州委指令案*のAnnexZ,p.50参照)。土地利用の変化の直接・間接影響を考えれば、大半のバイオ燃料は温室効果ガス排出を却って増加させるだろう。間接影響については測定方法さえ決まっていない。

 妥協案では、「バイオ燃料生産のための作物が以前は食料作物を栽培するために使われていた土地で栽培され、この食料作物生産が以前は利用されていなかった他の土地(例えば森林)に移動する」という「間接的土地利用変化」が引き起こす温室効果ガス排出については、「欧州委員会が測定方法を開発する」というだけである。

 *http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=COM:2008:0019:FIN:EN:PDF