バイオ燃料の温室効果ガス排出 間接的土地利用変化の影響も測定、と米EPA

農業情報研究所(WAPIC)

09.2.25

 米国2007年エネルギー法は、温室効果ガス排出削減効果が一定基準を満たすなどの要件を満たすバイオ燃料の使用量を2022年までに360億ガロンに増やすことを義務付けた。その実施ルールを起草している環境保護庁(EPA)担当官が、バイオ燃料の温室効果ガス排出量測定方法の変更の余地はないではなく、外部のレビューを求めることを計画しているが、排出量評価においてバイオ燃料生産に使われる作物の栽培の増加から生じる”間接的”土地利用変化からの排出*も計算に入れるというルールを取り下げよという産業界―バイオ燃料企業やバイテク企業など―の圧力には屈しないと語ったそうである。

 EPA Will Review Greenhouse Gas Emissions from Biofuels,Scientific American,2.24
 http://www.sciam.com/article.cfm?id=epa-review-biofuel-emiss

 *参照:バイオ燃料→土地利用変化で温暖化ガスが激増 森林等破壊防止規制も無効 新研究,08.2.9

 07年エネルギー法では、2022年までに使用が義務付けられるバイオ燃料のなかの210億ガロンはセルロースエタノールなどの次世代バイオ燃料でなければならないとされている。そして、その中の”先進的”バイオ燃料は、温室効果ガス排出量を通常燃料よりも50%以上削減するものでなければならず、セルロース系バイオ燃料は60%以上削減するものでなければならないとされた (トウモロコシエタノールは20%以上、バイオディーゼルは50%以上)。

 しかし、もしも”間接的”土地利用変化の温室効果ガス排出への影響も計算に入れられるとなると、このような基準を満たすバイオ燃料など果たしてあるのだろうかという疑問が生じる。産業界は、科学的不確実性を主張、提案されたこのようなルールの見直しを要求してきた。

 昨年末に成立したEU再生可能エネルギー利用促進指令も、少なくとも当面、この影響は考慮外とした(EU再生可能エネルギー利用促進指令のバイオ燃料持続可能性基準(仮訳),08,12.26)。

 わが国農林水産省の「国際バイオ燃料基準検討会議」がまとめた「バイオ燃料の持続可能性に関する国際的基準・指標の策定に向けた我が国の考え方」(概要版:http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kankyo/pdf/081105_1-01.pdf)も、”間接的土地利用変化については、少なくとも「可能な限り間接的土地利用変化による悪影響を避ける」等の定性的な指標を設けるべき”と言うにとどめた。

 「持続可能なバイオ燃料に関するラウンドテーブル」(RSB)運営委員会が昨年8月に発表した「持続可能なバイオ燃料生産のためのグローバルな原則および基準:バージョンゼロ」も、「その影響の大きさや、何をすれば影響が軽減されるかについてのコンセンサスはほとんどない」として、当面次のことが必要と言うにとどめた。

 ・バイオ燃料と土地利用変化の関係を確認し、定量化するための継続的な世界的研究、

 ・土地利用変化の否定的影響がないバイオ燃料を促進するメカニズム

 ・これらの否定的影響を軽減するが、生産者の業務コストを過度に上げないメカニズム

 ・弱者が、食料やエネルギー価格の上昇やその他のあり得る否定的な経済的副作用により、さらに不利益を被らないように保証する国家レベルでの社会的保護措置。

 EPAは、この影響定量にどう取り組むのだろうか。これは、まさしく見守る価値がある。