英国石油 ヤトロファ・バイオディーゼルに見切り D1 Oilsとの合弁を解消

農業情報研究所(WAPIC)

09.7.18

 BP(ブリティッシュ・ペトロリアム、英国石油)とD1 Oilsが07年6月に立ち上げたベンチャー企業・D1-BP Fuel Crops Limited が7月17日、BPが持つ同社の50%の株を買い取ることで合意したと発表した。

 Agreement with BP on D1-BP Fuel Crops,09.7.17
  http://www.d1plc.com/news.php?article=197

 D1-BP Fuel Cropsはヤトロファ・バイオディーゼルの開発と事業化を目的に設立された会社であり、これはBPが、事実上、ヤトロファ・バイオディーゼル事業から撤退することを意味する。この合意により、2009年5月31日現在、アフリカ、インド、東南アジアで22万ヘクタールになるとされるヤトロファ栽培や、これに関連した植物科学、技術、サービスは、すべてD1 Oilsの管理下に置かれることになる。

 この合意と同時に、D1 Oils は、バイオディーゼル生産のためにケニアとザンビアにヤトロファ・プランテーションを持つカナダのBedford Biofuels社に、5年間にわたって植物科学と栽培技術・サービスを供給することで原則合意した。

 D1 Announces First Third-Party Deal to Supply Jatropha Technology and Services,09.7.17
 http://www.d1plc.com/news.php?article=198

 これにより、アフリカ、アジアに広がるヤトロファ栽培熱にどんな変化が生じるかは予測できない。しかし、ロイヤル・ダッチ・シェルに次ぐヨーロッパ第二の石油会社のヤトロファ・バイオディーゼルからの撤退は、少なからぬ影響を与える可能性がある。

 BPに関しては、ヒューストン・クロニクル紙が次のように伝えている。すなわち、BPは、ブラジルと米国でのエタノール生産と、バイオブタノール開発に注力するために、D1 Oils とのヤトロファ・バイオディーゼルプロジェクトから撤退するのだという。ヤトロファの将来性に見切りをつけたということだ。

 同紙によると、BPのスポークスマンは、e-mailで、「これらの投資の成功を確保するために、BPは、これら分野の新しいビジネスの開発に集中しており、もはやバイオ燃料原料としてのヤトロファに直接かかわることはないだろう」と語った。

 BP Alternative Energyは、2015年までの10年間に80億ドルのプロジェクト投資を予定している。BPは、バイオ燃料が2030年までに世界輸送用燃料市場の11%から19%を占めるようになると予想しており、その推定では、去年は世界のバイオ燃料の10%を供給した。

 米国の大学と共同、バイオ燃料研究に10年で5億ドルを支出する。デュポンとも共同、バイオマスから作られるガソリンに似た燃料・バイオブタノールの開発を行っている。

 去年は、ブラジルのエタノールベンチャー・Tropical BioEnergia SAへの投資(50%の株保有)に合意、生産を増やすために5-10年で50億ドルの支出を計画している。

 今年2月には、米国のVerenium Corpと、スイッチグラス、トウモロコシ穂軸、木材廃棄物などからセルロースエタノールを生産するベンチャーの立ち上げで合意した。

 BP exits jatropha biofuel project to focus on ethanol,The Houston Chronicle,7.17
 http://www.chron.com/disp/story.mpl/business/6533823.html

 食料と競合するバイオ燃料への批判の大合唱で始まった、ヤトロファ栽培のためのアフリカ・アジア諸国の大量の土地の”収奪”が、これで多少なりとも治まればと期待する。

 関連情報
 
英国D1 Oilsが最初のヤトロファ油 ヤトロファディーゼル実用化への第一歩?,08.10.2