EU持続可能なバイオ燃料認証制度が始動へ 森林転換オイルパーム農園から生産されるものは排除

農業情報研究所(WAPIC)

10.6.12

  欧州委員会が6月10日、2010年12月に発効する再生可能エネルギー指令に定められた持続可能性基準(EU再生可能エネルギー利用促進指令のバイオ燃料持続可能性基準(仮訳),08,12.26)を満たすバイオ燃料をどう認証するかについて発表した。その要点は次の3点である。、

 ・持続可能なバイオ燃料の認証

 欧州委員会は産業、政府、NGOが持続可能なバイオ燃料の自主的認証計画を立ち上げるように奨励する。欧州委員会はこれらの計画が信頼できるものかどうか、しっかりした監査ができるかどうか評価する。この認証は、表示付きで販売されるすべてのバイオ燃料が持続可能で、再生可能エネルギー指令が定める基準に従って生産されたものであることを保証する。すべての認証計画は、農業者から燃料供給者までの全生産チェーンを検査する独立監査人を持たねばならない。

 ・自然保護

 バイオ燃料を生産するために使用できない土地のタイプの明確化。これらの土地には天然林、保全区域、湿地、泥炭地が含まれる。森林から転換されたオイルパーム農園もバイオ燃料の生産のために使用できないことが明示された。

 ・温室効果ガス排出を大きく減らすバイオ燃料だけを促進。温室効果ガス排出を大きく減らすことを証明する方法を明確に定めるとともに、石油及びディーゼルに比べて35%削減を達成できないバイオ燃料は承認されないことも確認した。この最低削減率は2017年には50%に引き上げられる。計算には二酸化炭素だけでなく、メタン、二酸化窒素も含める。 ただし、これを考慮に入れれば温室効果ガス排出が却って増えてしまうことをEU自身の研究が示しているとされた「間接的土地利用変化」の影響(EU 新たな研究がバイオ燃料利用目標レベルの切り下げを示唆 一定レベルを超えると間接的土地利用変化が環境便益を帳消し)には触れていない。これについては年末までに報告を出すとするだけである。個々のバイオ燃料の認証においては、これはまったく考慮しなということになりそうだ。

 この認証システムは実際にどう働くのか。たとえばとして、次のように説明される。

 ブラジルのエタノールを使用する燃料供給者は、バイオ燃料の量をイギリス当局に通知せなばならない。このバイオ燃料が持続可能であることを示すために、供給者は自主的計画に加わることができる。燃料供給者は、彼がバイオ燃料を購入する貿易業者により、貿易業者がエタノールを購入するエタノール工場により、エタノール工場にサトウキビを供給する農業者により、生産チェーン全体を通してあらゆる記録を保管する。このコントロールは企業が認証計画に加わる前に行われ、その後少なくとも年に1回は行われる。監査人は、すべてのペーパーをチェックし、農業者、工場、貿易業者の一つのサンプルを検査する。エタノール原料が生産される土地が本当に以前から農地であったのか、熱帯林ではなかったのかもチェックする。

 ついでながら、欧州委員会は、必要なバイオ燃料の大部分はEU域内で生産されるとし、土地の制約のために熱帯林を切ることにつながるという批判に反駁している。2020年までに輸送用燃料の10%という目標を達成するためには200〜500万ヘクタールが必要だが、EUには以前作物生産に利用されていたが、今は耕作されていない土地が十分にあり、全量をEU内で生産することもできるという。

 しかし、これはにわかにには信じがたい。2006年のOECDの研究は、10%の目標を達成するために必要なEU15ヵ国の土地は3151万8000ヘクタール、現在の穀物・油料作物・砂糖生産用地の72%にもなると推定している。あまりにかけ離れた数字に、筆者はとまどうほかない。

 Commission sets up system for certifying sustainable biofuels,European Commission,6.10
 http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/10/711&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
  Commission sets up system for certifying sustainable biofuels,EC,6.10
  http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/10/247&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
  Communication on the practical implementation of the EU biofuels and bioliquids sustainability scheme and on counting rules for biofuels
  http://ec.europa.eu/energy/renewables/biofuels/doc/biofuels/2010_06_10_biofuels_communication_pratical_implementation.pdf
  Communication on voluntary schemes and default values in the EU biofuels and bioliquids sustainability scheme
  http://ec.europa.eu/energy/renewables/biofuels/doc/biofuels/2010_06_10_biofuels_communication_voluntary_schemes.pdf
  Commission decision on guidelines for the calculation of land carbon stocks for the purpose of Annex V of Directive 2009/28/EC
  http://ec.europa.eu/energy/renewables/biofuels/doc/biofuels/2010_06_10_biofuels_decision_stock_guidelines.pdf