農業情報研究所農業・農村・食料北米または環境エネルギーニュース:12年7月31日

アメリカ畜産業界 エタノールの義務的利用免除を要請 トウモロコシの減収予想と価格高騰で

  アメリカの食肉・畜産関係諸団体が7月30日、燃料用エタノールの義務的使用量を定める「再生可能燃料基準(RFS」)の適用を今年に限って免除するように環境保護庁(EPA)に請願した。

 2007年エネルギー独立・安全保障法は、2022年までの各年、再生可能燃料(大部分はトウモロコシを原料とするエタノール)利用目標を達成するために、ガソリンに一定量のエタノールをブレンドすることを義務づけると決めた。これがRFSと呼ばれるものである。ただし、州・地域・連邦の経済に重大な損害をもたらす場合には、その実施を免除することができるとされている。食肉・畜産諸団体は、50年来とも言われる干ばつで主要飼料原料のトウモロコシの大幅減収が予想され、それによってトウモロコシ価格が史上最高[レベルにまで高騰している今は、まさにそうした場合に当たると、今回の請願に踏み切ったのである。

 年々の義務的利用量はEPAが定めるが、2012年には132億ガロン、2013年には138億ガロンとされている。請願によると、この利用量に等しいエタノールの生産のためには、それぞれ47億ブッシェル、49億ブッシェルのトウモロコシを使わねばならない。いくつかの予測は、今年収穫されるトウモロコシの量を118億ブッシェル(2011年は130億ブッシェルだった)と推定している。これは、トウモロコシエタノールの生産のために、生産されるトウモロコシの40%が使われることを意味する。

 こうして、RFSは、「この国の主要農業部門の供給と飼料コストに直接影響を与え、RFS免除を正当化するタイプの経済的損害を引き起す」。請願は、「今、十分な損害が起きており、また穀物供給と飼料価格に影響を与える経済的条件が今後数ヵ月、ますます悪化することは明らかである。どちらの条件も、RFS免除の根拠を提供する」と言う。

 Coalition Urges Waiver of RFS Because of Drought,National Cattlemen's Beef Association,12.7.30

 とはいえ、よほどのことがない限り、免除が認められることはありそうにない。これは、経済をトウモロコシ−エタノールに大きく依存するアイオワ等中西部の死活にかかわる政治的問題となる。農務省もEPAの損害調査にどれほど適切なデータを提供するだろうか。EPAは2008年のトウモロコシ価格高騰時にも、免除を正当化するほどの経済損害は起きないと、テキサス州の同様の請願を却下している。

 EPA Decision on Texas Request for Waiver of Portion of Renewable Fuel Standard (RFS),EPA,2008.8
  国環境保護庁 テキサス州のバイオ燃料利用義務免除の要求を拒否(農業情報研究所) 08.8.8

 今回の請願についても、燃料エタノール推進団体である再生可能燃料協会(RFA)は、免除は家畜飼料ともして使われる穀物蒸留粕(DDGS)の供給を減ら し、家畜産業に救済をもたらさず、飼料価格の大きな低下にもつながらない。エタノール工場は高タンパク飼料も生産しているから、エタノール生産制限は干ばつに関連した飼料とコストの問題を一層複雑にすると応酬 する。さらに、免除は雇用を減らし、ガソリン価格を上昇させ、国の外国石油への依存を続けさせることになり、国民経済にとっても何の利もないと言う。

  RFA Responds to RFS Waiver Petition,RFA,7.31
 
US meat producers seek ethanol waiver,FT.com.7.31
  Livestock groups seek drought relief with ethanol waiver,Reuters,7.30