農業情報研究所環境エネルギーニュース:13年2月5日

米国EPA 2013年再生可能燃料基準を提案 バイオ燃料vs食料の対立に拍車

 米国環境保護庁(EPA)が1月31日、2013年の「再生可能燃料基準」(RFS)を提案した。RFSとは2007年エネルギー独立安全保障法(EISA)により年々定めるとされた再生可能燃料の使用目標のことである。 ブレンダ―やガソリン販売業者が使用を義務付けられる再生可能燃料の最低限を、量及び使用される化石燃料(石油由来のガソリン・ディーゼル燃料)対する比率で示す。これは毎年増やされ、2022年の360億ガロンが最終目標とされている。

 再生可能燃料義務的使用目標(農業情報研究所)
 http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/earth/energy/document/siatistics/us_ethanol.htm#07 

 EPAの提案では、2013年RFSはバイオマスベースのディーゼル(ライフサイクル温室効果ガス排出量が化石燃料に比べて50%以上少ない)が12.8億ガロン(1.12%)、先進的バイオ燃料(コーンスターチ、つまりトウモロコシ由来のエタノール以外のバイオ燃料 、たとえばサトウキビ原料エタノールl)が27.5億ガロン(1.60%)、セルロースバイオ燃料(セルロース由来バイオ燃料でライフサイクル温室効果ガス排出量が化石燃料に比べて60%以上少ない)が1400万ガロン(0.0008%)、そして総量は165億5000万ガロン(9.63%)となっている。

  これを2007年法(EISA)が定めた量と比較してみよう。総量と先進的バイオ燃料については変わらない。バイオマスベースのディーゼルについては2007年法は2012年(10億ガロン)までの基準を示すのみで、13年以降はEPAが定めるとしていた。13年基準は12年に比べて2.8億ガロンの増加 になる。そして2007年法は13年に10億ガロンとしていたセルロースバイオ燃料はたったの1400万ガロンとされた。

 こうした基準は、2007年法が要求するように、何よりも食料の供給や価格、環境への影響に配慮するものでなければならない。しかし、昨年の干ばつによるトウモロコシの供給不足が食料価格に与える影響を恐れるくつかの州や議員団の基準減免要求を影響は微小と蹴とばしたEPAのこと(米国環境保護庁(EPA) エタノール燃料基準適用免除を拒否)、それは問題外なのであろう。

 ただ、こんな基準がまかり通れば、食料経済への影響は避けられないだろう。バイオディーゼルの増産は、大豆の需給ひっ迫と価格高騰に拍車をかけるだろう。米国バイオディーゼルの90%は大豆が原料だ。大豆価格高騰が大豆バイオディーゼ生産からの撤退を促し、熱帯雨林の破壊につながるパームオイルディーゼルが増える恐れもある。先進的バイオ燃料基準は、ブラジルのサトウキビエタノールの輸を増やすことによってしか満たせないないだろう。

 食料とのバッティングを避ける切り札であるセルロースバイオ燃料 については、さすがに基準を大きく切り下げた。しかし、500万ガロン、660万ガロンという2010年、2011年の基準についてさえ、先月、アメリカ石油協会の訴えを受けたコロンビア地区連邦控訴裁判所は、その無効を認めている。存在しないものの購入(使用)など不可能というわけだ。2013年 の基準もたった2社の期待生産量に対応するだけで、確たる商品生産の見通しがあるわけではない。エネルギー省の生産見通しも960万ガロンにとどまる。

 それでも何故こんな基準の拘るのか。食料と衝突することなく2022年目標を達成するためには、その基準を年々増やすことで開発を促さねばならないからだ。しかし、こんな目標が達成できると信じる者は一人としていない。360億ガロンという最終目標に拘るなら、結局は食料 や環境とのバッティングは避けられない。米国バイオ燃料政策は真の正念場にある。しかし、オバマ政府は、それに気づいてさえいないようだ。

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Court Overturns E.P.A.’s Biofuels Mandate,The New York Times,13.1.26
New U.S. Biofuel Proposals Could Draw Heavily from Food Sources,IPS,13.2.2
Government’s plan to expand biofuel use runs into multiple bumps in the road,The Washington Post,2.1