農業情報研究所環境エネルギーニュース:2016年11月30

国立公園内でのメガソーラー 環境省が規制基準 開発促進の恐れも

環境省が28日、国立公園普通地域内での太陽光発電施設設置を禁止・制限する等、自然公園法上の「措置命令等」の処理基準追加案をパブリックコメントに付すると発表した。 

 国立公園普通地域内における措置命令等に関する処理基準等の改正案への意見の募集 環境省 16.12.28

 近頃、国立・国定公園内に太陽光発電施設を建設しようとする動きが広がっている。こうした動きに景観・環境保全の観点から新たに規制をかけようというのがその眼目だ。そのために、以下の基準のすべてに適合するかどうかを審査、風景を保護するために必要があると認められる場合は措置命令等を行うという。 

 これらの基準とは、①当該太陽光発電施設が主要な展望地から展望する場合の著しい妨げにならず、当該太陽光発電施設が山稜線を分断する等重要な眺望の対象に著しい支障を及ぼすものでないこと、②当該太陽光発電施設の色彩及び形態がその周辺の風景と著しく不調和でないこと・・・・等々だ。

 これで本当に景観・環境が保全できるのだろうか。人々が尊重するのは、必ずしも「主要な展望地」からの「展望」や「山稜線」を分断されない「眺望」だけではないだろう。もっとありふれた路傍の花畑や樹林の風景を堪能する人も多いだろう。「色彩及び形態がその周辺の風景と著しく不調和」かどうかも、観る人の主観に左右される。

 かつてヨーロッパでは、農地放棄の環境への影響が論議されたが、最も評価が割れたのは景観への影響だ。畑や牧草地が広がる田園風景の喪失に心を痛める人もいれば、耕作放棄の結果生じる藪や森林を愛でる人もいた(農地放棄とその環境への影響ーEC委員会農業情報から レファレンス 381 1982.10)。

 景観の評価は人さまざまだ。藪や森林ではないこんな風景を称揚する人さえいるかもしれない。

 国立公園内でのメガソーラー建設は禁止する。何故そうしないのだろうか。禁止するか許可するか、それが規制者の主観によって決められるとすれば、新たな規制は事実上の規制緩和、メガソーラーは大手を振って国立公園を侵食することになりかねない。メガソーラーは既にわが国の多くの森林と自然空間を侵食している。それが国立公園jに及ぶのは絶対に避けねばならない。少なくとも、基準はもっと客観的なものに改めねばならないだろう。