農業情報研究所環境エネルギーニュース・意見:2018年7月4日

「荒廃農地に太陽光」の新エネ計画 日本列島に何をもたらすか 厳重監視が必要

政府は73日、新たなエネルギー基本計画を閣議決定した。政策文書としては余りにお粗末なこの「計画」は、その実現の可能性をめぐってとやかく言う価値もない(目標実現の方法も手順も見えない新エネルギー基本計画 「プルトニウム削減」実現できるのか 時評日日 18.7.3)。だが、この文書にはその実現の可能性如何にかかわらず、実現に向かって無闇に突っ走れば重大な結果を招きかねない「目標」(「方針」)が示されていることには注意せねばならない。

 例えば、2030年の電源構成で原発を20-22%とする目標を実現しようとすれば現在9基ほどの稼働原発を30基ほどに増やす必要があり、原発の再稼動とともに建て替えや増設も不可欠になる。既にそうした兆候も現れている(敦賀の原発増設・建て替え「考える」 資源エネルギー庁室長(福井) 中日新聞 18.6.28東通原発の建設再開準備 震災後初 東電、地質調査へ 東京新聞18.6.30など)。核ごみ処分がますます重大になるばかりか、原発事故で日本に人が住めなくなる恐れもある。

 再生可能エネの「主力電源化」も、「見るも無残な日本列島」化を加速しかねない。例えば太陽光発電の比率を30年に7%程度にするというが、既に6%近くを達成している現在でも、日本列島の至るところに見るも無残な光景が現出している。

 メガソーラー 見るも無残な日本列島(シリーズ7 岡山県)

 メガソーラー 見るも無残な伊豆半島(4) 修善寺も

 メガソーラー 見るも無残な伊豆半島(3)

 メガソーラー 見るも無残な日本列島(シリーズ6)

 メガソーラー 見るも無残な日本列島(シリーズ5)

 松島やああ松島やメガソーラー

 メガソーラー 見るも無残な伊豆半島(2)

 メガソーラー、見るも無残な伊豆半島(1)

 メガソーラー 見るも無残な日本列島

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 新エネルギー基本計画によると、「再生利用困難な荒廃農地」も太陽光発電用地として活用するという(40頁)。「荒廃農地」を何故農地として、あるいは放牧地として、あるいはその他の緑地空間として再生しようとしないのか。そういう試みは、今や全国各地に広がっている(注)。こういう土地を太陽光発電用地として「活用」するということは、「再生利用可能な荒廃農地」を「再生利用不能な荒廃農地」に、最終的には廃用太陽光パネル(産廃)の処分場に変えることであり、「見るも無残な日本列島」化に加担することに他ならない。

 お粗末な「基本計画」に基づく無計画な政策的実践が日本列島に何をもたらすか、これは厳重に監視する必要がある。

 (注)

 山北に牧場オープン 29歳女性が「山地酪農」実践へ 神奈川新聞 18.6.11

 耕作放棄地活用し米作り みどり市が地酒「山紫」を商品化(群馬) 東京新聞 18.3.20

 耕して農地守ろう 再生協が初の運動 甘楽 上毛新聞 18.1.16

 放棄地対策にタマネギ JA茨城むつみ 茨城新聞 18.1.11

 山間地に牧歌的風景 高遠の耕作放棄地に羊 長野日報 18.6.26

 耕作放棄地を再生 ソバ畑に 十日町 クボタが農業支援 新潟日報 18.6.12

 放棄棚田、再生向け一歩 滋賀・高島で果樹植えつけ開始 京都新聞 18.2.26

 耕作放棄の棚田、果樹園に 琵琶湖一望、観光に期待 京都新聞 18.1.2

 島根大生 放棄地活用 山王寺棚田にビオトープ 山陰中央新報 18.5.8 

 牛の放牧で耕作放棄地管理 福山 中國新聞 18.4.15