農業情報研究所環境エネルギーニュース:2015年6 月13日

米国EPA 2014-16年の再生可能燃料基準を提案 バイオデーゼル基準引き上げで大豆油が早速急騰

 米国環境保護庁(EPA)が5月29日、遅れに遅れている再生可能燃料基準(RFS、各年の使用が義務付けられるバイオ燃料の量)を提案した。

 EPA Proposes Renewable Fuel Standards for 2014, 2015, and 2016, and the Biomass-Based Diesel Volume for 2017 (PDF),EPA,15.5.29

   提案の詳細は 

 Notice of Proposed Rulemaking,EPA,15.6.10
 http://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2015-06-10/pdf/2015-13956.pdf

 2008年から2022年までの各年のRFSは2007年エネルギー独立安全保障法が下図のように定めている。 

 

 

 但し、大気浄化法は、一定の条件の下でこの量を減らす権限をEPAに与えている。EPAは今回、再生可能燃料の利用可能性やこれを消費できる車への供給を制約する要因、さらには市場の対応能力などを考慮して、この権限の行使を提案した。今回提案されたRFA2014年、2015年、2016年に関するものだが、すべての再生可能燃料について、14年(実際に生産され・利用された量):159.3億ガロン、15年:163億ガロン、16年:173億ガロンとなっており、法律が定める量を各々12%、20%、22%下回る。   

 

 再生可能燃料(バイオ燃料)の太宗を占めトウモロコシエタノールの法定目標量は15年以降150億ガロンに抑えられているが、15年のRFSはそれを10%ほど下回る134億ガロン、16年も7%ほど下回る140億ガロンにとどまっている。大部分の石油会社がガソリン燃料への混合率を10%以上に増やさないという”ブレンド・ウォール”にぶつかって、エタノールの国内需要は今以上に増えないと見通されるからだ。

 

 温室効果ガス排出がすくない”先進的(第二世代)バイオ燃料”のRFS14年:26.8億ガロン、15年:29億ガロン、16年:34億ガロンとかなりの増加だが、それでも法定目標の半分に届かない。セルロース系エタノールは生産の見込みが今なお立たないために、大きく増やした16年のRFSでも20.6億ガロン、法定目標42.5億ガロンの5%にしかならない。エタノール産業はお先真っ暗だ。

 

 そんななか、バイオ・ディーゼルについては法定目標10億ガロンを大きく超えるRFSが設定された。15年:17億ガロン、16年:18億ガロン、17年:19億ガロンだ。バイオ・ディーゼル産業の前途は洋々、というところかもしれない。ただし、アイオワ州立大学農業農村開発センター(CARD)によれば、「今日のディーゼル価格と原料価格の経済は、引き続く政府支援と技術改良がなければ有望にはみえない。予想される植物油、特に大豆油の価格上昇はバイオ・ディーゼル生産者の利益を搾り取り続けるだろう」と言う。

 

 U.S. Biodiesel Production: Recent Developments and Prospects,Iowa Ag Review,Spring 2007, Vol. 13 No. 2

 

   EPARFCを提案すると、バイオ・ディーゼルの有力原料である大豆油やパームオイル(CPO)の先物相場は、たちまち急騰した。バイオ・ディーゼル産業だけでなく、食料価格の先行きが思いやられる。